2年前に都内のIT企業を早期退職し、割増しの退職金を受け取ったという中村圭吾さん(54・仮名)。独身生活を貫いてきて、子どももいない。
そんな中村さんはかつて出張で度々訪れ、豊かな自然環境に魅力を感じたという四国地方のある県に早期退職をきっかけに移住した。当初は「遂にFIRE(経済的自立と早期リタイア)したぞ」と意気揚々だったという中村さん。事実、移住直後は東京生活では体験すらできなかった釣りやアウトドアに精を出していたが、2年経った現在では周囲に「東京に戻りたい」と漏らしているそうだ。
50代の若さにして地方での夢の隠居生活を手に入れたはずの中村さんは、なぜ再び東京に戻ろうとしているのか。地方移住とそれにまつわる問題を今回は専門家と共に検証する。
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大学卒業から長年IT企業に勤めてきたという中村さん。自身が勤めてきた会社が社内で早期退職制度の希望者を募ったのは2年前のこと。この告知を見たとき中村さんは心の中でこう呟いたという。
《俺は勝った、人生に勝ったんだ……》
早期退職の募集要項を読む限り中村さんが受け取れる退職金の金額は2500万円。これとは別に今までに運用してきた資産が1500万円ほどあったという。ずっと独身で、子どももいない中村さんは“FIRE”をすることを決断したそうだ。
「十分な資産もありますし残りの人生は田舎でのんびり暮らそうと思ったんです。物価が高い東京にこだわらなければ、もう働かなくても暮らせるかなと。なんせ、資産は4000万円もありましたから」
最終出勤日には同じ部署で働く同僚から手書きのメッセージが書かれた色紙と花束を手渡されたという中村さん。感極まり、周囲に「ぜひ、四国に遊びに来てください」と声をかけると「絶対、行きます」、「今度は家族も交えて遊びましょう」との返事が後輩社員を中心に返ってきたという。
移住当初は、東京では体験することができなかった釣りや山に登っての山菜採りに精を出していたという中村さん。今までは会社員生活で忙しいく十分に更新できていなかったフェイスブックやインスタグラムも頻繁に更新。海釣りや山菜採りを楽しむ姿を投稿したところ、即座に40~50件の“いいね!”を獲得したという。
しかし、現地での生活が2~3か月と経つにつれて、これらの投稿へ反応してくれる人も1人、また1人と減っていった。2年経った現在ではSNSに現地の写真を投稿しても反応してくれる人はせいぜい2~3人。中村さんも「東京に戻りたい」と漏らしているという。
「移住後、たまには東京から会社の同期や友達も遊びに来てくれて、楽しく過ごせると思っていたんですが……誰も来やしない。送別会のときは後輩たちもあんだけ“絶対、行きます”って言ってたのに。それとインスタでは“いいね!”がつくから釣りや山菜採りの写真を定期的にアップしていますが、あんなの楽しいのは最初の2~3回だけ。
すぐ飽きますよ。今では自宅の近くの安い居酒屋にいる72歳の女将だけが話し相手。ちくわの磯辺揚げをアテに毎日のように昼から酒を飲み、大相撲の中継を見ています。友人と言えるような人も作れていないし、大学時代の同級生のように気が合う人もいない。刺激がなくて、暇なんですよね……」