■FIREを決断する上で気をつけるべきポイントを【CFPが解説】

──FIREを決断するにあたって金銭面で気をつけるべきポイントはありますか。

 FIREを判断する際に最も重要なのは、「今ある資産額」ではなく「その資産で何年、どの程度の生活水準を維持できるか」を冷静に見積もることです。中村さんのように54歳で退職する場合、一般的な老後より資産の取り崩し期間が長く、30年超を想定する必要があります。そのため、退職直後の高揚感だけで判断せず、

1.年間生活費
2.税金・社会保険料
3.医療費や介護費の増加
4.物価上昇
5.相場下落時の資産取り崩しリスク

 の5点は必ず確認したいところです。特に「生活費200万円なら4000万円で十分」と単純計算するのは危険で、実際には想定外支出やインフレで必要額は膨らみます。

 また、FIRE後に孤独感や生活の張り合いの喪失から、都市部への往来や趣味・交際費が増えるケースも少なくありません。つまり家計設計では、住居費や食費だけでなく、「生活満足度」まで含めて考えることが大切です。

 人的ネットワークや日常の充実度が欠けると、結果的に生活コスト以上の“精神的コスト”が発生します。FIREはゴールではなく、長い生活運営のスタートです。退職前には最低でも「悲観・標準・楽観」の3パターンで資金計画を作り、働かない選択だけでなく、ゆるやかに働き続ける選択肢も残しておくべきでしょう。

【記事後編】では東京で暮らしていた人が地方で移住することの難しさや金銭面で気をつけるべきポイントをCFPの宮岡秀峰氏が解説する。《【後編】はこちらから》

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/