金融庁の金融審議会が発表した報告書が話題を呼んだのは2019年6月のこと。夫65歳・妻60歳の無職世帯をモデルケースに老後の生活費を試算。高齢夫婦無職世帯の平均的な家計収入が約20万9000円である一方、支出は月に約26万4000円。月々5万4000円、年間で64万8000円の赤字が出ると報告したのだ。
この生活が30年間続けば老後の生活を送る上で2000万円が不足すると算定、この数字は「老後2000万円問題」として話題になった。しかし、現在、都内で暮らす小野田信之さん(79・仮名)は「報道された数字通りに実際の生活は進まない」と語る。今回は実際に年金生活を送る小野田さんのケースを基に老後の生活にまつわるお金の話を専門家と共に検証する。
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「老後2000万円問題を初めて聞いたときには目まいがしました」
そう語るのは小野田さん。小野田さんが5歳年下の妻と年金暮らしを始めたのは2000万円問題が報じられた7年前のことである。当時の家計状況を小野田さんが振り返る。
「当時生活に必要だった費用は、食費と水道光熱費を合計して8万5000円ほど。ここに車の維持費やガソリン代、遊行費を加えると毎月25万円ほど支出がありました」
小野田家が受け取っていた年金は月におよそ20万円。毎月5万円ほどの赤字が出ていた形だ。人生100年時代と言われるこの時代。小野田さんもこのままのペースで生活を続ければ2000万円近くのお金が必要になると考えていたという。ところが、20年以降コロナウイルスが世界中でまん延したことで外出を自粛。小野田さんの生活にかかる資金も大幅に変わることになる。
「前年まで夫婦で月に5万円ほど使っていた遊行費が1万円以上減りました。夫婦で20万円の定額給付金も貰えたのでこの年は年金だけで暮らしても年間で1万円の黒字が出ました」