■老後に必要な資金は3000万円超、実態を【CFPが解説】

──生活に必要な費用はこの6年間で約20%も増えています。今後も物価上昇が続く場合、どのような工夫を生活をする中で行う必要があるでしょうか。

 物価上昇が続く局面では、まず「節約」よりも家計の固定費を構造的に軽くすることが重要です。具体策としては、

1.固定費(通信・保険・サブスク)の定期見直し
2.大きな支出を分割する「積立方式」(住宅修繕・家電更新など)
3.生活満足度を落とさない支出の優先順位付けが有効です。

 特に老後家計は、日々の食費や光熱費以上に、車、住まい、医療、レジャー、家族イベント費が収支を左右します。

 総務省の2025年家計調査では、65歳以上の夫婦無職世帯は月4万円程度の赤字です。したがって、毎月の家計簿よりも「年間予算」で管理し、臨時支出を見える化することが大切です。値上げ局面では、我慢一辺倒ではなく、使う費目と削る費目を分ける家計運営が現実的です

──物価上昇が続けば老後に必要となる費用も大幅に増えると考えられます。老後に必要な生活資金の目途となる金額はありますか。

 生命保険文化センターの2025年度調査によれば、夫婦2人の老後における最低限の生活費は月23万9000円、ゆとりある生活を送るためには月39万1000円が必要とされています。一方で、2025年の夫婦高齢者無職世帯の実収入は月25万4395円にとどまり、現実の家計では月4万2434円の赤字が生じています。

 この赤字を単純に積み上げると、月4万2000円の不足であれば20年間で約1018万円、30年間では約1527万円となります。さらに、旅行や趣味、家族との交流といった「ゆとりある生活」を重視する場合には、追加資金が必要となり、老後期間を通じて3000万~5000万円規模の備えも現実的な水準に入ってきます。

 したがって、現在の環境を前提とした老後資金の目安は、最低限の生活であればおおむね1000万~1500万円前後、ゆとりを重視する場合には3000万円超と考えるのが実態に近いでしょう。

 重要なのは、「老後2,000万円」という一律の数字にとらわれるのではなく、自身の年金見込額と望む生活水準を踏まえたうえで、不足額を逆算して具体的な準備額を見極めることです。

【記事後編】では老後資金の正しい準備方法や有効な投資方法をCFP・宮岡秀峰氏が解説する《【記事後編】はこちらから》

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/