■倒産の嵐の中で生まれた「教育+α」という活路

 また、成果が見えにくい教育費に対して納得感を求める声が強まるなか、自習室の滞在時間や問題演習の速度、集中度などをデータ化し、スマートフォンへリアルタイムで共有する「学習の可視化」を強化する動きが目立ちます。その背景には、学習状況を数値で示すこと自体が、保護者に対する新たな付加価値として機能しているという側面があるようです。

 さらに、国内受験市場の縮小を背景に、海外大学進学支援へ軸足を移す動きも加速。英語指導にとどまらず、海外大学が重視する課外活動やボランティア経験、起業体験の設計まで支援するケースもあり、国内受験一本から脱却し、グローバル人材育成を掲げる塾が増加しています。

「倒産件数の増加という数字の裏で起きているのは、塾の閉鎖という表面的な問題ではなく、これまでの『学校と塾』の役割分担そのものの崩れです。以前は学校が生活基盤や居場所を担い、塾が受験に必要な学力を補うという明確な棲み分けが存在していました。しかし現在、その境界線は急速に曖昧になっています」

 と話すのは、教育ジャーナリスト。では、学校と塾は、どう棲み分けていくことになるのでしょうか。

「教育ニーズがここまで細分化・個別化すると、すべての機能を一つの教室に詰め込む従来型の大型塾や一斉指導モデルが、コスト面や運営面で限界を迎えるのは自然な流れ。学びの場が多様化するなかで、塾の存在意義そのものが問われ始めています」(同・教育ジャーナリスト)

 ネット上でも、《倒産リスクまで含めて塾を選ぶ時代になった》《動画学習で十分という価値観が広がった》《不登校支援の塾に救われた》といった声が聞かれます。

 少子化と教育ニーズの変化に揺れるなか、学習塾は「教育+α」の価値を模索する時代を迎えています。試行錯誤の末に、今後はどのような次世代サービスが立ち上がってくるのか、業界の動向が注目されます。

トレンド現象ウォッチャー・戸田蒼
大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。