■頭数は約20年で300倍に!
脱走したのは数十頭とみられるキョンだが、令和になった現在では、その頭数は膨大なものとなっている。
「令和6年度末時点で推定9万4100頭が生息しているとされています。その中でも、君津市や鴨川市、大多喜町、富津市等に多く生息していると推定されています」(千葉県環境生活部自然保護課)
ちなみに、房総半島だけでなく伊豆大島でも、動物園から脱走したキョンが爆発的に増え、農作物や希少植物の食害が報告されている。
なぜ、約半世紀の間だけでここまで増えたのか。そこには、キョンの“驚異の繁殖力”がある。
「キョンは年間最大2回、出産します。しかも、生後7~8か月で性成熟を迎え、1年を通して繁殖することが可能なんです」(前出の動物園関係者)
ネズミ算ならぬ“キョン算”で増えているというのか──。その被害は千葉県で続々と報告されている。
「年間を通して木の葉を主に食し、秋にはシイ・カシ類などの広葉樹の固い実も多く食しているようですが、としても水稲、豆類、いも類、野菜類、果樹など多くの農作物被害も報告されています。さらには、鳴き声に対する苦情や花壇の花、植木の採食といった生活環境被害もあります」(前出の千葉県環境生活部自然保護課)
房総半島といえば、冬でも温暖でエサとなる植物も豊富。さらには天敵となり得るクマや肉食動物もいないことから、根絶が難しい状況が続いていたという。
「市町村による捕獲においては、農作物被害が大きいイノシシが優先して捕獲される場合が多かったことなども理由として考えられます」(前同)
しかし、近年はさらに捕獲、駆除は進んでいる。たとえば、鴨川市ではキョンの肉が、ふるさと納税の返礼品としてあり、一般の人でも味わえる珍味となっている。
「平成12年度の捕獲数は28頭でしたが、令和6年度には 9594 頭に増加しています。また、県が捕獲していることに加え、今年度からは市町村が行う捕獲に、1頭あたり5000円から7000円と補助単価を引き上げています」
なお、千葉県にはキョン以外にも駆除に苦戦している外来生物が何種か確認されている。
「有名なものでは、印旛沼のカミツキガメや館山市のアカゲザル。これらはペットあるいは動物園、観光施設等で飼育されていた個体が何らかの理由で脱走したものと考えられています。どちらも農作物や人身への被害が懸念されるため、千葉県では現在、防除事業を実施しています」(動物園関係者)
ペットを逃がさないことと、野生動物に餌付けをしないことは、我々でもできること。気をつけていきたいところだ
人間の都合で連れて来られ、これまた人間の都合で野生化し、繁殖を繰り返している外来生物。一概に彼らが悪いとは言えない部分もあるが、人間の生活にとっても死活問題ではある。彼らとの攻防戦は、まだまだ長いものとなりそうだ。