■夜中に突然目覚めて不安に駆られる夜は
子供の頃から「よく考えなさい」なんて言われたりしましたが、“考えること”は、けっしていいことばかりじゃないんですね。考えないこと、不要な思考を減らすこと、それこそが脳に余白を作ることにつながるんですね。
ご同輩、ここからは高齢者としての語りかけです。
私自身は、それほど人に相談するほどの悩みはないし、AIに聞きたいこともないけど、だけどね、こんな私でも夜中に目が覚めてトイレに行くと、そこからピタッと眠れなくなることがあるんですよ。
このときの人間心理は不思議でしてね。何か心配しなければならないという緊急の事態があるわけでもないのに、頭の中で一つ「あれは、どうしよう……」という不安が浮かぶと、その不安がどんどん広がっていくんです。
若い人には分かんないと思うけど、年を取ってくると、夜中に目覚めたときに、ふっと、ふだん考えてもいないような不安にかられることがあるんだなぁ。
これを武田流に例えますと、シャボン玉の液が入ったビンの中にストローを突っ込んで息を吹き込むみたいなもので、下からどんどんシャボンの泡が湧いてくるようなものです。これと同じように、一つ不安を思い出すと悩み事が、どんどん湧きだしてくる。
若い頃はそんなこと考えたこともなかったけど、年を取ると「こんなことがあるのか」と驚くばかりですね。なんでもないような不安や心配にかられて眠れなくなることがあるんですよね。
女房のお母さんは、いつも私の先行きについて心配ばっかりなさるんですよ。
そこで私が「お義母さん、そんなに心配しないでください」って言ったところ、お義母さんは、こう返すんです。
「年寄りは心配するのが仕事ですたい」
これは名言だと思うなぁ。“老婆心”というやつですよね。高齢になってくるとね、どうしても心配事や悩み事が湧いて出てくるものなんですよね。私も年を取って、ようやく、そのことが分かるようになりました。
私を含めて、ご高齢の皆さんにアドバイスするならば、絶対に必要なのは“頭に余白がある”こと。
頭の中が考え事であふれ返っていて余裕がないと、シャボン玉のビンにストローで息を吹き込むみたいに、際限もなく不安や悩み事というあぶくが湧いて出てきちゃいますよ。
なにしろ江戸時代の人たちの一生分の情報が1日で飛び交う世の中を、私たちは生きてるわけですから。
いかに情報を選別して、必要なこと以外、考えないようにするか。それが今の時代を上手に生きるコツなんでしょうね。
さぁ、考えないことを考えましょう。
仕事の合間に、帰り道に、夜布団に入ってから 頭の中では絶えず「内なる声」が話し続けている。現代人の止まらない脳内の思考をどう止めるか。「考えなくていいことを考えすぎ」な自分を救うための、思考の取捨選択を提案する一冊。著・堀田秀吾、フォレスト出版

好評連載中の武田さんの新刊『花咲けじいさん 人生後半の教科書』が好評発売中!
長寿でめでたい──とは言うが、年を取ると不安や心配事も増える。そんな貴方へ、そしてこれから歳をとる方へ、喜寿(77歳)を迎えた武田鉄矢が贈る「老いの教科書」。ボケも孤独も夫婦関係も…読むだけで人生を軽やかになる一冊。

武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。