「そんなに老後資金って必要なの!」

 サッカーW杯で日本代表が奮闘を見せる6月半ばのこと。同僚から老後に必要となる生活資金は「1億686万円」と伝えられたのは諸田洋平さん(56・仮名)だ。

 諸田さんは従業員1000名以上が働く電子部品加工メーカーに勤務。同企業の平均年収は550万円ほどだ。国税庁のHPによれば2024年の日本国民の平均給与は545万円。諸田さんの会社の社員は平均よりも高い給与を受け取っている。現に昨年役職定年となり年収が下がったという諸田さんだが、それでも現在の年収は600万円ほど。世間一般と比較すると高給だ。それなのに諸田さんはなぜ老後資金の心配をする必要があるのか。今回はお金の専門家と共に老後資金に関する問題を検証する。

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 2025年の総務省の家計調査では65歳以上の無職夫婦世帯の支出は月29万6829円。人生100年時代。仮に65歳から30年、夫婦で95歳まで生活すれば1億686万円の生活費が必要になるというわけだ。諸田さんが話す。

「老後2000万円問題とか聞いたことはありますよ。ただ、退職金が1000万円もらえますし、定年となる60歳から年金の受給が始まる65歳までは継続雇用で働こうと考えていたんです」

 諸田さんの銀行口座の残高は500万円ほど。私立大学に通う息子に年間120万円の学費が必要だというがそれもあと1年のみだという。老後の生活に不安などないはずだった諸田さん。それがいきなり老後の生活資金として1億円以上も必要だと告げられたのだから驚くのも無理はない。

 事実、諸田さんの誕生月に届く年金定期便を見る限り、夫妻が老後に貰える年金は約23万7000円。

 厚生労働省が発表している26年度の厚生年金のモデル世帯の支給額は月23万7279円。諸田さんの家庭は日本中の至る所にあるモデルケース家庭なのだ。

「一般家庭が老後資金に1億円も準備なんてできませんよね……」