■老後資金を備える上でのNISAの活用法を【CFPが解説】
──老後資金を準備するために諸田さんはNISAの活用を視野に入れています。少ないリスクでリターンを得られる投資信託にはどのようなものがありますか。
まず前提として、投資信託は預貯金とは異なり、元本が保証されている商品ではありません。したがって、「少ないリスクで必ずリターンを得る」というよりも、正確にはリスクを分散しながら、長期的にリターンを期待するという考え方が重要です。
その観点からは、全世界株式や先進国株式に連動するインデックス型投資信託が有力な選択肢となります。幅広い地域・企業に分散投資できるため、個別銘柄に投資する場合と比べてリスクを抑えやすい特徴があります。
ただし、50代後半から老後資金として投資を始める場合には、若い世代とは異なる注意点があります。積立期間が比較的短く、資金を取り崩す時期も近いため、相場が大きく下落したタイミングで取り崩しが始まると、資産寿命に影響する可能性があります。
そのため、すべてを株式型の投資信託に回すのではなく、預貯金や個人向け国債、債券なども組み合わせ、安全資産と運用資産を分けて管理することが現実的です。
NISAは運用益が非課税になる有利な制度ですが、制度そのものがリスクを下げてくれるわけではありません。大切なのは、NISAを使うこと自体ではなく、自分の年齢、収入、退職時期、年金額、取り崩し時期に合った資産配分を決めることです。
──老後資金の準備の仕方としてオススメする方法はありますか。
老後資金の準備として重要なのは、投資だけに依存しないバランスの取れた設計です。NISAなどの積立投資は資産形成の有効な手段ですが、それだけで将来設計を組むのは適切とはいえません。投資には価格変動リスクがあるため、資産が一時的に減少する可能性も織り込んでおく必要があります。
病気、介護、住宅修繕、家族への支援など、老後には想定外の支出が起こることがあります。まずは、急な支出にも対応できる生活防衛資金を確保し、その上で余裕資金を運用に回すことが基本となります。
また、公的年金をどのように受け取るかも重要な戦略です。受給開始を遅らせる「繰下げ受給」によって年金額を増やすことができますが、この方法は、健康状態や就労の見通し、繰下げ期間中の生活資金の確保などを踏まえて慎重に判断する必要があります。さらに、可能であれば、定年後も一定期間働くことは非常に効果的です。働くことで収入を得られるだけでなく、貯蓄の取り崩し開始を遅らせることができます。これは資産運用で高い利回りを狙うよりも、確実性の高い老後対策といえます。
退職金についても、受け取った直後に大きく投資するのではなく、当面使う資金、中長期で運用する資金、緊急時に備える資金に分けて管理することが重要です。
老後資金は「いくら貯めるか」だけでなく、「どの順番で使うか」まで設計することで、より安定した生活につながります。年金、退職金、預貯金、NISA、就労収入を組み合わせ、資金の枯渇リスクを抑えることが、安心できる老後への近道です。
【記事前編】では、老後資金を準備する上で考慮すべき項目をCFP・宮岡秀峰氏が解説する。《【記事前編】はこちらから》
宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。
税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/