■年金の受給を行なう上で適切なタイミングを【CFPが解説】

──現在、年金の受給は60歳から行なうことができます。年金の受給を行なう上で適切なタイミングはどこだとお考えになりますか。理由と合わせて教えてください。

 年金の受給開始時期に万人共通の正解はなく、「資産・健康・働き方」に応じて決めるべきものです。制度上は65歳が基準ですが、60歳から繰り上げ、75歳まで繰下げが可能であり、それぞれ一長一短があります。

 判断の軸として重要なのは、単なる損得ではなく「キャッシュフロー」です。例えば、退職直後の生活資金に不安がある方は、繰上げや65歳受給が合理的です。一方、十分な金融資産があり、長期的な生活設計が可能な方は、繰下げによって終身収入を増やす選択が有効になります。

 なお、損益分岐点は一般に80代前半とされており、そこまで生存すれば繰下げが有利となる設計です。 ただし、健康状態や家族構成によって前提は大きく変わるため、「平均値」に依存した判断は危険です。年金は「総額を最大化する制度」ではなく、「長く安定して生活するための制度」です。したがって、どの時期にどれだけの収入が必要かという視点から逆算して受給開始時期を決定することが、実務的には最も重要といえます。

【記事後編】では年金の繰上受給と繰下受給のメリットとデメリットをCFP・宮岡秀峰氏が解説する

※税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格を持つ宮岡秀峰氏

宮岡秀峰(みやおか・しゅうほう)
公認会計士、税理士、行政書士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)。税理士法人アクシア代表社員、アクシア公認会計士事務所代表。公認会計士として会計・財務の視点から中小企業支援に取り組むほか、相続・事業承継分野にも幅広く携わる。講演や税務相談の実績も豊富で、会計・税務分野の書籍共著、雑誌寄稿も行なっている。

税理士法人アクシア 公式HP:https://axia.or.jp/