61歳となる日に定年退職を迎え、それから4年間継続雇用で東京都内の専門商社に勤務してきたという上杉泰平さん(72・仮名)。65歳になったタイミングで年金を受け取るべく、手続きや相談を行なうことができる都内の年金事務所を訪れたという。そこで上杉さんは相談員に「本当に今、年金を受け取りますか」と言われ、繰下げ受給をすすめられたそうだ。それから7年、72歳を迎えた今、上杉さんは「あのとき繰下げ受給なんてするんじゃなかった」と怒りの表情を見せる。今回は年金と老後生活の実態をお金の専門家と共に検証する。
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都内の年金事務所を訪れた上杉さんは相談員にこう声をかけられたという。
「本当に受け取りますか? 1か月年金を受け取る月を繰下げるだけで0.7%、3年間受け取りを後ろ倒しにすれば毎月の受取額が25.2%も上がりますよ」
この提案を“お得だ”と感じた上杉さんは間髪入れず年金の繰下げ受給をすることを決意したという。このときの心境を上杉さんはこう振り返る。
「だってお得じゃないですか。仕事を辞めた直後の65歳なんてハッキリ言って“現役バリバリ”。ついこの間まで会社で20代の新入社員と机を並べ仕事していたわけで、3年なんてあっという間。2000万円の退職金も受け取っていますし、3年間の生活費は一切心配していませんでした」
事実、上杉さんは68歳までの3年間大病を患うこともなく無事に過ごす。そして上杉さんは、更なる年金受給額のアップを目指し70歳から年金の受け取りをすることを決意する。5年間受給を繰下げることで上杉さんが受け取れる年金は42%もアップ。65歳当初は月に16万円ほどの年金が支給される予定だったが70歳になった今、月に受け取れる年金は23万円にまで増えたというのだ。当時を振り返り上杉さんはこう語る。
「“勝った”と思いましたね。退職金があったので継続雇用が終わってからの5年間、生活資金に不安はありませんでした。健康に暮らせる老後の5年間、年金の繰下げ受給をしたことで、本来もらえる年金の金額よりも40%以上多く貰えるんですから。これで老後の生活にはなんの不安もない。そう思いました」
そう語る上杉さん。しかし、加齢は徐々に上杉さんの体を蝕んでいったという。