■日本人男性の平均健康寿命は72.45歳
年金の受給を上杉さんが始めてから2年後のこと。加齢による影響から運動能力の低下を感じるようになったと上杉さんが話す。
「自宅の前で転んでしまい足を骨折。それ以来、外出することも少なくなり、寝て過ごすことが増えました。現役時代はゴルフが趣味だったので年金生活が始まったら月に1回ゴルフに行こうと思っていたのですが……」
厚生労働省が発表したデータによれば、2022年時点で日本人男性が心身ともに自立し、健康的に生活できる期間は72.45歳まで。サラリーマンとして働いてきた人が退職後、健康に過ごすことができる期間は想像よりも短いのである。
更にショッキングな情報が上杉さんに降りかかる。5年間年金の受給年齢を繰下げ、70歳から年金を受け取り始めた上杉さんは、81歳11か月よりも長生きをしないことには、年金の総支給額が65歳時点で受給を始めた人を上回らないのだ。
厚生労働省によれば日本人男性の平均寿命は24年時点で81.09歳。65歳時点から年金の受け取りを始めた人の方が、70歳から年金の受給を始めた人よりも総支給額では上回る可能性が高いのだ。上杉さんが布団の上でこう呟く。
「あのとき繰下げ受給なんてするんじゃなかった……」
年金と老後生活の実態を税理士法人アクシア代表社員で、公認会計士・税理士、CFP資格(日本やアメリカなど世界各国・地域で認定されている国際的なファイナンシャル・プランナーの最上位資格)を持つ宮岡秀峰氏が解説する。