近年、大きく様変わりしている文化がある。それが喫煙文化だ。
「電子タバコの登場により、火を使わないタバコは、一つのスタンダードになりました。さらにここに来て、“煙の出ないタバコ”が話題になっています」(生活誌ライター)
この“煙の出ないタバコ”というのは、「オーラルタバコ」や、「かぎタバコ」という名前で販売されているもの。スウェーデンやノルウェーなどの北欧圏では一般的だという。
現在、販売されている多くの商品の使い方は、ニコチンの成分が入った小袋(パウチ)を湿らせて、唇と歯茎の間にセットする、というもの。
日本では、「ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社(BATジャパン)」が『VELO』という商品を2020年から発売したのをはじめ、「日本たばこ産業(JT)」が『ノルディック・スピリッツ』という商品を今年3月から、「フィリップ モリス ジャパン」からは「ZYN by IQOS」という商品が今年5月から発売。今年に入り商品数が増加し、すでに喫煙者の中では一つの選択肢となっている。
一方で、この“煙が出ない”ことで、「オーラルタバコ=安全」という誤った認識が広がっているという。循環器内科医で日本禁煙学会認定指導医の『お茶の水駅前生活習慣病クリニック』又吉周氏がこう話す。(以下、コメントは又吉氏)
「私は禁煙外来の患者さんの対応もしているのですが、最近“禁煙のためにオーラルタバコに変えた”、“オーラルタバコは安全なのでしょう?”と話す患者さんがいらっしゃるんです」
しかしこれは、大きな間違いだという。
「確かに、煙の出ないという性質上、副流煙などの受動喫煙のリスクは下がると思いますが、喫煙者本人に対する健康被害のリスクは紙タバコなどと同じです。日本禁煙学会の見解でも、オーラルタバコ1パッチ=紙タバコ1本という考えなんです」
さらに、禁煙目的という点では逆効果になる可能性もあるという。
「オーラルタバコは、口内の唇と歯茎の間にパウチをセットすることでニコチンを摂取しますが、これにより、紙タバコなどとニコチンの吸収、脳や血管に到達するスピードが変わるんです。オーラルタバコによるニコチンの血中濃度のピークは、使用20分から1時間後。紙タバコなどを使用している方にとってはガツンとした使用感がない分、長時間使用してしまうケースが考えられます」
煙が出ないことで陥りがちなケースもある。
「場所を選ばず使用できるということは、どこでもいつでも使用できるということ。常に体内にニコチンを取り入れる状況になると、依存症のリスクは高まってしまいます」
つまり、“禁煙のためのオーラルタバコ”は大きな誤解であるということだ。