■海外から評価される日本の小学校教育にはデメリットも

 こうして世界から注目を浴びる日本の公立小学校だが、この特活を積極的に取り入れている国がある。それがエジプトだ。

「エジプトは、2018年に“エジプト日本学校”という公立小学校を35校スタートさせました。2016年に来日し、日本の教育に感銘を受けたエルシーシ大統領の強い意向によって実現したそうです。それまで暗記中心の詰め込み教育が主流だったエジプトは、協調性や自主性を育む仕組みの弱さが課題でした。そこで、日本の特活を取り入れたんです」(前出の親野氏)

 以前のエジプトは、大教室に1クラス平均55人という大人数の児童が詰め込まれ、授業は講義形式が一般的だった。そんな中、エジプト日本学校では1クラスを36人に制限。長机と長いすに詰めて着席するスタイルから、日本と同じく自分専用の机といすが行き渡るようにしたという。

「エジプト日本学校では、日直、学級会、掃除、朝の会、帰りの会、運動会といった日本でお馴染みの活動が実際に行われています。その結果、協調性や責任意識を育むことに成功し、今ではエジプト全土の小学校で特活が導入されています」(前同)

 他にも、インドネシア、カンボジア、タイ、ヨルダン、スリランカ、モンゴル、ベトナムなどの国々で特活は注目されている。こうした状況を受け、文部科学省は「EDU-Portニッポン」という官民共同プロジェクトを2016年に始動。経済産業省、外務省、JICA、JETRO、民間企業、大学、NGOらと一体となって、日本式教育の輸出に力を入れているという。

「日本式教育が広がれば、教育関連産業も海外市場を拡大させるでしょう。また、指導者として教師も現地に派遣されるので、海外の教育を日本の教育現場に持ち帰ることで、日本式教育の課題解決も期待できます」(同)‎

 親野氏がこう指摘するように、集団主義が生むのは美徳だけではない。みなと足並みを揃えることは、時に同調圧力となってしまうのだ。

「人に迷惑をかけないようにする反面、みんなと同じようにできない人やルールを守らない人、違う価値観の人にも厳しくなってしまう。また、上から言われたことしかできない歯車的人間ができやすい。自分軸の生き方ができず、他人に“助けて”とも言えない大人になってしまうケースが多いです」(同)

 さらに、日本の教育構造そのものが、現在の日本の教育が抱える最大の課題でもある。

「欧米では、教師の他にもカウンセラーやナース、清掃員などがそれぞれの専門分野を担当していますが、日本の教師はそれらを一人で背負い、大きな負担になっています。世界から賞賛される小学校教育は、教師の自己犠牲の上に辛うじて成り立っているのが実情です」(同)

 世界が羨む日本式教育は、日本人にとっては決して特別なものではなかった。幼い頃から積み重ねてきた日々の当たり前が、大谷翔平のような特別な才能を育て上げたのは間違いない。だが、サムライブルーが世界一に近づき始めたように、日本式教育も今後さらなる進化を遂げるだろう。

親野智可等(おやの・ちから)
教育評論家。公立小学校での23年間の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案している。『親の言葉100』『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。