■ダウンタウン浜田との共演でも不安に駆られ
ダウンタウンの浜ちゃんのトークバラエティのときもそう。彼は会話のテンポも速く、独自の世界を持っている。私から見た浜ちゃんは「この人、ガラ悪いなぁ」……って浜ちゃん、ごめんね(笑)。それが印象的でした。
とにかく浜ちゃんのテンポに合わせて、私も次々に話を繰り出すんだけど、谷原さんのときと同じようにズレるんですよね。
それが、すっごい不安なの。「これウケるな」と思ったおしゃべりを、浜ちゃんは弾くときがあるの。テンポが合わないとひどいことに、オレの話をあっさりと弾くのよ。彼もプロだから。でも、それがすっごくつらいんで、家に帰って一杯飲みながら、ふっと不安がよぎるんですよ。
「オレ、大丈夫かな?」って。
ある本に書いてあったんですが、人間は話の流れをジャッジする時間がわずか“0.5秒”なんだそうですよ。0.5秒のうちに話の流れをジャッジして話をつなぐんだって。例えば反論したり、話を合わせたりというのも、0.5秒のうちにジャッジしないと、とたんに話はズレていくんですって。
バラエティ番組でいうとトークは“生モノ”なんで、1秒、2秒と間を開けるとトークがズレるんですよ。ラジオだと局によっても違いますが、5秒ぐらい何もしゃべらないと、放送事故ですからね。それはもう恐ろしいほどの瞬発力が要求されるわけです。今回の参考文献、『考えてはいけないことリスト』(著・堀田秀吾/フォレスト出版)の中に私にピッタリの言葉がありました。
【過度な文化的羞恥意識】
〈他人の目があなたの人生の主導権を握ってしまう〉こと。
これを読んでハッとしました。
ここで白状しますが、芸能界においては役割みたいなものがあって、ちょっと敏感なんですよね。私は、例の荒川の土手を歩いてる教師役のイメージから、いまだに芸能界では「先生」ってニックネームで呼ばれるポジションなんですよ。
どうも私は、その「先生」という世間体をいつも、どこかで意識してるところがあるんですね。
谷原さんと出会っても“先生”であろうとするし、浜ちゃんの前でも“先生”でなければならないと意識してしまう。そうするとね、すっごく不安になるの。でも、あまりに世間体を気にしすぎると、
自分の行動や自己評価が過剰に制限され、心の負担や生きづらさにつながってしまいます(堀田秀吾. 『考えてはいけないことリスト』. フォレスト出版, 2025)
だそうです。つまり、私にとって、「先生として見られている」というのは“考えてはいけないこと”なんですね。
他人の目を意識しすぎると生きづらくなる。私は身をもって、そのことを実感しております。皆さんも他人の目を気にするのはほどほどに。
自分というものを家族でも仕事でも貫こうとすると、息苦しくなるものです。3割、4割引きの自分でよし。
そんな、考えてはいけないこと、考えてみました。
仕事の合間に、帰り道に、夜布団に入ってから 頭の中では絶えず「内なる声」が話し続けている。現代人の止まらない脳内の思考をどう止めるか。「考えなくていいことを考えすぎ」な自分を救うための、思考の取捨選択を提案する一冊。著・堀田秀吾、フォレスト出版

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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。