モノ消費からコト消費への変化が叫ばれて久しい昨今。近年、各業界でトレンドとなっているのは「体験価値の向上」だ。さまざまなサービス業が極上の「体験」をうたうなか、その流れはラーメン店にも及んでいる。
最近では街角で見かける長い行列。気になって覗いてみると、そこは『麻辣湯』だったという事が多い。野菜などのたくさんのトッピングを自分好みにカスタマイズできるお店で、特に女性には大人気だ。来店客は提供された1杯を食べるだけではなく、自ら具材を足していき好みのラーメンを作り上げていく。まさに“参加型”の店舗体験だ。
この流行はラーメン店の間で確実に広がっている。このように消費者の店内での行動に導線が敷かれた“体験設計型”の店舗が増加する背景には、どのような理由があるのだろうか。
東京を中心に年間500杯ものラーメンを食べ歩き、様々なラーメン情報を世界へ発信するインバウンドラーメンコンサルタント・藤野弘行氏に話を聞いた。
今や外国人にも人気を博す日本のラーメン店では「並ぶことも含めて、ラーメン店訪問が“アトラクション”化している」と藤野氏は指摘する。
「味だけの勝負から一歩抜きん出る店が人気を得るようになっています。食べる前に、香りや視覚情報など五感にリーチしつつ、食べ方の選択肢を用意してくれるスタイルが、今後ますます増えていきそうです。
たとえば長く人気となっている麻辣湯は、多数あるトッピングの中から選択するという面白さと、食材を眺める時間、組み合わせの妙、映えなどすべて合致して、その時々の自らの1食の“体験設計”となっているわけですよね。外食に対して、出されたものを食べるだけから、自分が能動的に参加しているという感覚が、付加価値として人気を得ているのだと思います」(前同)
食材を眺める時間という“体験”を重視しているのが広尾にある『CRAFT NOODLES はしづめ』だ。
「老舗製麺会社の『はしづめ製麺』が新しく展開した店で、カラフルな素材を練り込んだ麺を何種類かの麺の中から選ばせてくれる。業界でもめったにない取り組みです。昔から素材と麺の組み合わせを研究してきた『はしづめ製麺』だからこその体験です。ラーメンの麺をまず目で楽しめる。その次に麺を選ぶ楽しみをくれるのです」(同)