■組み合わせ次第で食べ方は無限大

 他にも業界内で注目されている取り組みがあるという。前出の藤野氏が話す。

「ラーメンであれば器は1つ、つけ麺は2つというのが一般的ですが、最近ではもう1つの器を用意する店舗も増えてきました」

 素材を組み合わせた食べ方を来店客に自由に選ばせる店舗があるというのだ。代表的な店のひとつが秋葉原にある『ほたて日和』である。

「このお店はつけ麺店として、2022年にオープンしてから都内でも屈指の人気を誇ります。まず他の店に比べると、香りをとても大切にしている。先付けのような意味合いでホタテのカルパッチョが用意されていて、つけ麺を食べる前にそれを食べる。口の中を、“ホタテ”のフレーバーでいっぱいにするのです。その後はガゴメや羅臼昆布を使った昆布水で浸った麺を混ぜる。その通りに混ぜてみると昆布の泡が立ち、さらに昆布の香りが豊かに立ちのぼって記憶に残る」(前同)

 その他にも用意されている、麺につけて食べる鰹塩やわさび、ハーブのディル、そしてホタテ出汁の凝縮されたつけ汁などを組み合わせ、消費者は提供された3皿の間で、自由に食べ方を楽しむことができるという。

「ラーメン店は一般的にはファストフードとしてのイメージが強く、さっと食べられる部分が魅力。一方でこちらのお店では、まず店主からオススメの食べ方の案内がある。そこから具材のバリエーションや組み合わせのギミック、最後に出てくる月替わりの割スープまで、何度も楽しみがあり、店内でゆったりと店主と会話をしながら過ごす時間まで設計されていると感じます。トッピングの組み合わせ次第でも何通りもあって、食べ方は無限大。単純な味変というだけでもない。そう、体験の拡張なんですよね」(前同)

 自分で、どう食べようかと考える体験を楽しむ。藤野氏は、こうした“体験設計型”の店舗が業界内で増えていくと指摘する。

「南新宿にある『伊之瀬』では、つけ汁が最大4種類提供されています。単一のつけ麺よりもパッと見の豪華さ、楽しさ、そして4種類の味わいのストーリーがある。同じ時間でも、ちょっぴり贅沢な気持ちになれます。一口に体験といっても、どこにフォーカスするかは店の個性。特にラーメンだと麺が伸びてしまうため、時間を置くことができないのに対し、つけ麺や混ぜそばといったジャンルで、体験型、参加型の店舗が新たなラーメンの可能性を見つけ出す余白は大きいと思います」(同)

『伊之瀬』のつけ麺 ※画像提供/藤野弘行氏