■放流するコストや網の破損もバカにならない…もはやクロマグロは“災害”
しかし、ここまで資源回復が果たされたのならば、いずれはマグロを手頃な値段で食べられる時代がやってくる……と思いたくもなるが、そうではない。冒頭でも触れたように、クロマグロを守っていた“漁獲量の上限”が存在するからだ。
しかも現在、漁業関係者は恩恵を被るどころか、“災害”に遭っている状態だという。
「クロマグロの漁獲量にはいまだに“漁獲枠”という厳正な上限規制がかかっています。だから、既定の量を超えると、漁期の途中でも操業を停止したり、捕らえたクロマグロを放流しないといけない。頭数が増して豊漁だとしても、増えるのは“逃がす労力”だけなんです」(前出の社会部記者)
さらにこの“災害”の影響は、本来獲れるはずだった他の魚の漁獲にも関わっている。
「たとえば、クロマグロによって定置網が破損したり、イカ漁の仕掛けが損傷したりした事例があります。また、クロマグロを主対象としていない漁業でも混獲が発生し、放流作業に大きな労力を要したり、場合によってはクロマグロ以外の魚も含めて網を開放し、放流せざるを得なかったりというケースがあります」(前出の広報部=以下同)
クロマグロを放流する際に、もともと捕らえるはずだった魚も少なからず逃がしてしまうというのだ。さらには、クロマグロの頭数が増えすぎたことでマグロに食べられる側のサンマやイワシがいなくなってしまう懸念もある。現状として太平洋側のマイワシは今年、記録的な不漁だ。
「ただ、近年見られるイワシやサンマの漁獲量減少がクロマグロ資源の回復によるものかどうかは、慎重な検証が必要です。例えば、北海道東沖におけるマイワシの漁獲量はここ3年ほど減少傾向にあるとの情報に接していますが、クロマグロが大幅な資源回復を示した2010年代には、マイワシ漁獲量も増加傾向を示していたという事例もあります」
今回の国際会議ではクロマグロの漁獲量拡大の合意に至らなかったが。近い将来、物価高が続く中でもトロが今より身近な存在になる日が来るかもしれないと思うと、楽しみなところだ。
最後に、気になるのは個人の遊漁にも、漁獲量規制は関係あるのかどうか。商業ではなく、個人が食べるための“レジャー”ならセーフかも? と期待してしまうが……。
「日本では、遊漁についてもクロマグロの資源管理措置の対象となっており、漁獲量などに関する一定の規制が設けられているのが現状です」
水産庁のホームページを確認したところ、30キロ以下の小型のクロマグロの採捕は禁止、また採捕報告は陸揚げ後1日以内に採捕者本人が行うなどの規制が行われている。実際、7月の採捕上限が3.8トンに対して7月3日時点の採捕数量は9.6トン。上旬の時点で“レジャーとしてのクロマグロ釣り”すら禁止されていた。残念!
国立研究開発法人 水産研究・教育機構
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