うどんといえば、讃岐うどん……という先入観を持つ人も多いかもしれないが、日本全国には“ご当地うどん”といわれる郷土料理が数多ある。その勢いは、“香川一強”を崩さんばかり。まさに戦国時代に突入しているのだ。今回はそのいくつかを紹介しよう。(前後編の後編)
麺について語られることの多いうどんだが、麺よりもだしの在り方を突き詰めて発展したのが「大阪うどん」だ。関西の食文化に詳しいライターが話す。
「江戸時代から商業の中心地だった船場や、芝居小屋が集まる難波では、人が集まり、食に金を使う文化がありました。そのため、徹底的に上品で五感に響くだし文化が発達します。北海道産昆布をふんだんに使い、薄口醤油で仕上げたうどんは、“だしを飲む”ためのもの。きつねうどんも、この地域から生まれています」
一方、同じ大阪でも、南河内ではまったく違ううどんが根づく。「かすうどん」である。
「南大阪、とりわけ松原や羽曳野、藤井寺周辺は、古くから食肉加工業と結びつきの深い地域でした。肉を捌く過程で出る部位を無駄にせず、油で揚げて保存性と旨味を高めたのが『油かす』。これが地元のうどん屋と結びつき、かすうどんとして親しまれるようになりました。あっさりした関西だしに肉のコクが加わることで、手軽に食べられて腹にもたまる、庶民のスタミナ食になったのでしょう」(前同)
このように、地域によってうどんの姿を変えてきた大阪だが、さらに振れ幅の大きさで目を引くのが愛知県だ。外食産業に詳しいジャーナリストが話す。
「愛知県のうどんは『きしめん』、『味噌煮込みうどん』をみなさんご存知でしょう。他にも変わり種で言えば、カレーうどんの下にとろろご飯が隠れた『豊橋カレーうどん』というものがあります。これは2010年、豊橋市の町おこしとして誕生しています」
ことの発端は、2008年のリーマン・ショック。景気低迷を受け、観光協会や地元の麺類組合、商工会議所などが連携し、地元を盛り上げる新たなご当地グルメの開発プロジェクトが始動した。ある店がまかないとして「カレーうどんにとろろをかけていた」ことに着目し、試行錯誤の末に完成したのが、この豊橋カレーうどんだ。
「豊橋市は、100年以上の歴史を持つ“うどんの聖地”。市内のうどん屋の自家製麺率がほぼ100%という全国的にも珍しい強みを持っており、この伝統文化を発信するためにうどんが選ばれました。ただ、豊橋カレーうどんは観光グルメの要素が強く、地元の人にとってより身近なうどんは『にかけうどん』です」(前同)