■周到に用意された“仕掛け”――視聴者を引きつけて話さないワケを分析
『Tシャツが乾くまで』は、なぜそこまで注目されるのか――シンプルな理由になるが、脚本・俳優・演出のいずれも近年まれに見る高クオリティであることが指摘されている。
まず脚本。『silent』、『いちばんすきな花』(フジテレビ系、2023年10月期)、Snow Manの目黒蓮(29)が主演した『海のはじまり』(フジテレビ系、24年7月期)など人間ドラマを描くことに定評がある生方氏が手掛けるという時点で期待する声は多かったが、今作は第1話からの怒涛の展開に加えて、SNSが盛り上がりやすい“考察”の要素も入っている。特に第3話で充(松山)の生存が確定してからというもの、“なぜ充は帰ってこないのか”がSNSで活発に考察されている感じだ。
そして、その秀逸な脚本を演じる俳優陣の素晴らしさ。蒼井演じる咲子の“夫の事故を知らされて感情の整理が追いつかず、無理やり笑ってるけど泣いてしまう”という場面や、中島演じる樹生の“妻の幻影と会話していたが、生前に頼んでいた宅配が届いたことで現実に引き戻され、『開けちゃうからね』と言って泣きながら確認する”というシーンなど、メイン2人の圧倒的な演技力はもちろんだが、同作は彼ら以外の俳優陣がもれなく一流の演技派揃いで、見ていて違和感を感じるような俳優がいないのだ。
たとえば、第2話では子役以外のメインキャストで最年少の高橋演じる直人が、中島演じる樹生とケンカ腰で話し合う場面があったが、そこも緊張感のある素晴らしいシーンになっていた。
さらに。まるで映画作品のような美しい映像と演出が、ドラマのクオリティを底上げしている感じなのだ。
《「どうせこんな感じなんでしょ」を裏切ってくれる生方脚本。今期一番おもしろい》
《脚本家特有の言い回しを自然な演技に落とし込む俳優の力量がすごい》
《駅での蒼井優×松山ケンイチのカボチャカレー(思い出のカレーパンについて話す)の二人芝居、映画みたいだった…咲子を見つめる充の視線が優しくて柔らかかった 幻だったけど⋯》
《映像美と脚本の面白さと、俳優陣の豪華さが半端なくて…面白いって言って良いのか分からないくらい1話の衝撃と喪失感エグいけどオススメ》
《今期1位2位争うレベルでハマってるドラマ!》
《tシャツが乾く前に 週2ぐらいで放送してほしいわ》
といった、さまざまな絶賛の声が寄せられている
そんな話題作『Tシャツが乾くまで』の魅力を、数多のドラマをウオッチしてきたドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。
「ラスト数分で衝撃の展開を迎え、次回の視聴への強い引きになっている。そんな初回から続いている仕掛けに、まんまとハマってしまっています。さらに、早くも第3話で充(松山)の生存が判明するなど、出し惜しみしせずに謎が明かされているのに、それでも”何だろう、これは?”と視聴者を惑わせるところもあるから、配信で見直したくなるんですよね。軽妙なセリフの裏に物語の鍵となる感情が潜んでいるなど、脚本、演出、演技が巧妙なためなのですが、毎回、感情を激しく振り回されてしまいますね」
『silent』、『いちばんすきな花』、『海のはじまり』などフジテレビでヒット作を手掛けた生方氏が生み出した『Tシャツが乾くまで』。スタートした同じTBSの“最強ドラマ”『VIVANT』の陰で、強烈な存在感を放っている――。
ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。