■海外からの投資はデメリットばかりではない
中国に限らず、日本の地方不動産は海外から人気があるようだ。すでに有名となったニセコや白馬だけにとどまらず、地元民でもなかなか足を運ばないような奥地ですら、外国人は注目する。愛知県奥三河地方で工務店を営む牧野氏の知人が、驚きの体験をしたという。
「彼は古民家を安く買い取ってリフォームし、2000万円程度で売りに出そうとしていましたが、それをオーストラリア人が購入したんです。提示してきた金額は、なんと6000万円でした」(前出の牧野氏)
こうした事例は小規模ながらも全国各地で起きているという。では、なぜ外国人は地方の物件を高値で買えるのか。
「その要因の一つが円安です。外国資本は日本の不動産事業者にとってかなりの強敵。こちらが円という弱い通貨で勝負するのに対し、相手はドルなどの強い通貨を持ってくる。地方の物件はそもそも買い手が少なく、国内相場で見ても安いため、外国人にはさらに割安です。入札になれば日本勢はなかなか勝てません」(前同)
だが、外国資本の流入を警戒する自治体や住民も少なくない。文化の異なる人が増えることで、まずはゴミや騒音などによる治安悪化が懸念される。土地の需要が高まって地価が上昇すれば、固定資産税の負担が増える可能性もある。賃貸相場まで上がれば、地元の若者が住み続けられなくなることも──。
「日本の不動産市場は、世界に開かれたフリーマーケットのようなもの。外国人でもほとんど制限なく土地や建物を購入できます。ルールを作らないまま外国資本を叩いても、問題の解決にはなりません」(同)
ただし、海外からの投資はデメリットばかりではない。買い手のなかった空き家や、廃業したホテルが再生されれば、新たな人の流れが生まれる。
「ホテルができれば、従業員の雇用が生まれ、その人たちが住むアパートの需要も高まります。観光客が街へ出れば、土産物店や地元の食堂、バス、タクシーも潤う。それによって自治体の税収が増えれば、市民サービスの充実にもつながります」(同)
過疎化に苦しむ地方にとって、外国資本は眠っていた不動産をよみがえらせてくれるかもしれないのだ。
「基地や重要施設の周辺など、安全保障上買われては困るエリアにはあらかじめ規制をかければいいんです。それ以外では地域のルールを多言語で伝えたうえで、違反した人には厳しく対処する。その線引きが必要だと思います」(同)
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牧野知弘(まきの・ともひろ)
不動産事業プロデューサー。『オラガ総研株式会社』代表取締役。東京大学経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産等を経て2009年『オフィス・牧野』を設立し、15年に『オラガ総研』を設立。不動産全般に関する取得・開発・運用・建替え・リニューアルなどのアドバイザリー業務を行う傍ら、講演活動を展開。著書に「新・空き家問題」(祥伝社新書)、「不動産の教室~富裕層の視点が身につく25問」(大和書房)「50歳からの不動産~不動産屋と銀行に煽られないために」(中公新書ラクレ)ほか、31冊目となる最新刊に「『外国人不動産』問題」(祥伝社新書)がある。テレビ、新聞、YouTubeなどメディア出演多数。