■インド南部の民族が古代の出雲へ移住!?

 さて、ここまでのお話は、日本神話をベースにしたものです。

 一方で、歴史研究者の中には違った見方をする人もいます。特に、国譲りの部分は、古代に起きた勢力争い、あるいは戦争の記憶を神話として描いたものではないかとも考えられています。

 それこそが、出雲大社における最大の謎なんです。

 日本神話の基となる“記紀(古事記と日本書紀)”は、大和を中心とした朝廷によって編纂されたもの。

 そこで、アマテラスを大和側、オオクニヌシを出雲側の象徴として見ると、国譲りは、大和の勢力が、土着勢力の出雲族を従えた出来事を表しているようにも見えませんか?

 さらに話を広げると、出雲の人々は、海外から渡来した民族の流れをくむのではないか、という説もあります。古代の出雲族は、オオクニヌシを信仰する以前、クナト神(久那斗)という神様を祀っていたそうです。

 そして、その名はインド南部にいたとされるクナ族の言葉に由来するのではないかと考えられています。農耕民族であった彼らは、3500年以上前、戦闘的なアーリア人の侵攻から逃れて、日本に移動してきたのではとされています。

 私は常々、古代の日本列島には、さまざまな民族が流れ着いていたと、お話ししてきましたが、出雲の歴史にもまた、遠い海外とのつながりが隠されているのかもしれません。

貴乃花光司(たかのはな・こうじ)
1972年8月12日、東京都生まれ。88年、藤島部屋に入門。92年の初場所で、史上最年少の19歳5か月で幕内初優勝。兄・若乃花と「若貴フィーバー」を巻き起こす。94年11月に第65代横綱に昇進。幕内優勝22回。生涯戦歴は794勝で、「平成の大横綱」と呼ばれた。2018年に日本相撲協会を退職し、現在はテレビ、講演会等、幅広く活躍中。