■オレンジとバナナの意外な共通点
原料不足に続き、昨今の物価高の要因となっている円安や原油高のダブルパンチが異常なまでのオレンジジュースの値上がりの原因ということ。このままではオレンジジュースを飲めなくなる日が来てしまうのだろうか。
だが、前出の坂口氏は言う。
「国際的なオレンジ果汁価格については下落基調にあります。ブラジルなどの豊作見込みなどを受け、先物市場では売りが先行しているようです。2026年に入ってからも、少なくとも高騰局面からは下落方向に動いていますが、日本の店頭価格がすぐに下がるわけではありません。企業は数か月前に契約した原料を使っていますし、輸送や加工にも時間がかかるため、価格が反映されるまでにはタイムラグがあります」
実際には3か月から半年後には値下がりしてもおかしくはないとのこと。だが、値上げ後も売れ行きが変わらなければ、メーカーや小売店には価格を下げる強い理由はないだろう。
「今回の高騰の要因の一つには、輸入先がブラジルとアメリカに偏っていたというのもありますが、両国は圧倒的な生産力を持ち、大量かつ安定的に調達できる産地でした。そこへ異常気象や病害が重なった、かなりイレギュラーな事態。それ自体がメーカーの判断ミスだったわけではありませんが、長期的な視点で見れば、別の産地や調達ルートも検討する必要が出てくるでしょう」
この構図は、バナナにも当てはまる。実はバナナも、今年に入って店頭の平均価格が過去最高を記録しているのだ。
日本でのバナナの輸入先の大半はフィリピンなのだが、そのフィリピンでは、土壌などを通じて広がる“新パナマ病(TR4)”によるバナナの病害が深刻な問題となっており、さらに降雨量の増加や気温上昇がこの病害の拡大につながっている可能性があるのだという。
「主要産地への依存と病害、異常気象が重なるという点では、オレンジとよく似ています。こうした問題が今後も続き、供給不安が常態化するようであれば、エクアドルなどの中南米、ベトナムやラオスなどからの調達を徐々に増やし、産地を分散させることも選択肢になるでしょう。ただし、輸入先を変えれば病害や異常気象を避けられるわけではありません」
坂口氏は、もっと別の視点も必要だと言う。
「バナナなどは、そもそもこれまでの輸入価格が安すぎた面があります。安さだけを求めるのではなく、一定の対価を支払い、その資金を現地の環境対策や病害対策に回してもらう仕組みも、企業は検討すべきかもしれません。また、日本は食品の約3分の1を廃棄しているともいわれます。供給不安への備えを考える一方で、現在手に入る食品をムダにしている状況についても、同時に考える必要があると思います」
オレンジジュースの値上がりは、環境問題や食品ロスに関しても考える良い機会なのかもしれない。
坂口孝則(さかぐち たかのり)
調達・購買コンサルタント。未来調達研究所株式会社所属。大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務し、資材、調達・購買、原価企画などの業務に従事。現在は製造業を中心に、調達・購買・資材業務に関するコンサルティングや企業研修、講演を行うほか、テレビや新聞などで経済や企業活動について解説している。『調達・購買の教科書』など著書多数。