■犯人は多くの証拠を残したまま逃走
次なる不可解な点は、4人を殺害したあとの犯人のおかしな行動だ。この事件の正式名称は『上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件』である。強盗とつくのは、夫妻の財布や1階の仕事部屋にあった塾の会費の紙幣、合計約20万円が盗まれていたからなのだが、物色の形跡から考えると、金品を探していたとは到底、思えない。通帳や印鑑、キャッシュカード、貴金属の類は一切、盗まれていなかったのだ。
家の荒らされ方も異様なものだった。タンスなどの引き出しはすべて引き出され、中身はすべて床にぶちまけられていた。そして一部の引き出しは浴室に持ち込まれて、中にあった書類などが浴槽に捨てられていたのだ。犯人はいったい何を探し、何を持ち去ったのか。この点も、実に奇妙だ。
【続きを読む】2回目『10時間も現場に居座った…「世田谷一家殺害事件」現場に残された“あまりにも多すぎる遺留品”の意味』では、元警視庁刑事・北芝健氏が犯人像に迫っている。
北芝健(きたしば・けん)
東京都生まれ。作家、漫画原作者、元警視庁刑事。早稲田大学卒業後、商社勤務を経て警視庁に入庁し、地域警察、刑事警察、公安外事警察の捜査に従事。沖縄剛柔流空手六段。日本拳法三段。警視庁柔道二段。全国警察逮捕術大会の優勝チームのコーチを務める。(社)日本安全保障・危機管理学会顧問、研究講座講師。日本経済大学大学院講師。主な著書に『まるごし刑事』(原作、実業之日本社)、『警察裏物語』(バジリコ)、『日本警察 裏のウラと深い闇』(大和書房)、『悪の経済学』(KKロングセラーズ)、『心理戦で勝つ技術』(KADOKAWA)、『警察・ヤクザ・公安・スパイ 日本で一番危ない話』『警視庁 強行犯捜査官』(さくら舎)『刑事捜査バイブル』(双葉社)など多数。