■なぜ目撃される可能性の高い昼間に逃走したのか

 所持品だけではない。犯人は現場に、いくつもの“痕跡”をも残している。

 その一つが足跡だ。犯人は4人を殺害後、血の海だった床を歩き回って家中を物色していたため、至る所に足跡が残っていた。その中には、壁伝いに横歩きしていた形跡も残っていたという。足跡は1種類の靴の跡だった。その靴底の型から、犯人が履いていたのは、サイズ27.5cm~28.0cmの韓国製のスニーカーだったということも解明されている。

 次に血液。犯人は殺害の際に自分の手を切ったようで、前述の黒いハンカチには、宮澤家の4人にはいないA型の血液が付着していた。また、家の中にあった絆創膏や生理用ナプキンで止血を試みたらしく、それらの使用済みの屑も無造作に捨てられていた。

 ほかにも指紋や掌紋が数多く残されていた。各部屋を荒らした際につけられたものはもちろんだが、犯人は冷蔵庫を物色して飲食をしており、丸ごと齧られた食べかけのハムやメロン、スプーンを使わずに握り潰して食べられたアイスクリームのカップ、ラッパ飲みしたお茶のペットボトルからも指紋や歯型が検出されている。さらに、トイレで催した大便の一部も便器に付着していた。

 個人を特定できる痕跡を、こんなにも残して逃げ去った理由は何か。それだけ逃走に自信があったのか、それとも、そうせざるを得ない事情があったのか。それが3つ目の不可解な点だ。

 そして一番理解し難いのが、犯人の逃走時間だろう。犯人は事件現場でパソコンを操作し、みきおさんの勤めていた企業コンサルタント会社のホームページや宮澤家の家計簿ソフトを閲覧していたことが分かっているのだが、その最後の通信履歴は、31日の1時18分と10時0分の2回。つまり、最低でも犯行後10時間もの間、犯人は現場にいたということになるのだ。犯行に及んだのが深夜であるにもかかわらず、なぜ目撃される可能性の高い昼間に逃走したのか。そんな危険を冒してまで、犯人が探していたものは何なのか。これもまた、大きな謎の一つだと言えるだろう。