■犯人は軍事訓練を受けた人物!?
これだけの謎が残る世田谷一家殺害事件の真相を、今現在、明らかになっている情報から、北芝氏とともに紐解いていきたい。現場に残された遺留物や犯人の痕跡から、犯人の特徴や経歴、性格などを分析して、犯人像を浮き彫りにする ──これが「プロファイリング」だ。これは、実際に警察でも犯人割り出しのために行う捜査手法の一つである。
まずは、殺害の動機について、北芝氏は、こう推理する。
「殺人事件の動機は主に、恨みを持った顔見知りによる犯行、強盗犯などによる犯行、通り魔による無差別的な犯行などがあります。この事件の場合、屋内ですから、まず通り魔は関係ないとしても、怨恨でも強盗でもない可能性が非常に強い。確かに強盗はしていますが、それが主目的だったら、普通は通帳や印鑑も盗むでしょう。盗まれた現金は、たまたま見つけたので手間賃として持って行っただけと思われます。また、どんなに恨みを持っていたとしても、一般人にここまでの犯行はできるわけがない。まして、顔見知りによる犯行だとしたら、なおさら怯んでしまうはず。これは、明らかに殺人のプロによる犯行、つまり、宮澤家を狙った誰かに雇われた殺し屋による委託殺人だと思うんです」
現場に残された数々の証拠からも、プロの犯行を裏付けるものがあるという。一見、大雑把に見える犯行の裏には、緻密な計画性が隠されていたのだ。
「まず侵入経路について。当初の報道では、風呂場の外の窓の下に足跡がたくさん残っていたことから、中2階にある風呂場から入ったといわれていたんですが、外壁に繊維痕が残っていなかったといいますから、おそらく違うでしょう。玄関のカギ穴を調べたら傷がついていたらしいので、ピッキングをして玄関から入った線が濃厚です」
繊維痕とは、人が物に接触した際に残る衣服の繊維のこと。壁などをよじ登ったときには、こすれた衣服の繊維が必ず残るものなのだという。
「サバイバルナイフで開けたとの話もありましたが、ナイフでは開きません。ピッキングは細い金属棒を2本使ってカギを開けるんですが、これは素人にできるものではありません。物盗りのプロでないとしたら、スパイか何かの訓練を受けた者かもしれません」
また、家の中にもプロの犯行を匂わせる痕が、いくつもあるという。
「壁伝いに横歩きをした足跡があったようですが、これは軍事訓練を受けた人間の歩き方なんです。また、遺留品の黒いハンカチには中央に穴が開けられていて、端と端を結んだ跡があったんです。これは返り血で手が滑らないように凶器と手を固定していた証拠。ほかにも、自分の傷を生理用品で止血するなどの機転の利かせ方は、どう考えても手だれの犯行なんです。
実は、公安の人間も疑われたくらいなんですよ。これだけ特殊な訓練を受けたことのある人間なんて、そうはいませんからね」