日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、シンガポールの年金制度についてです。

 世界の年金制度を「制度の持続可能性」「財政健全性」「ガバナンス」で比較した「グローバル年金指数ランキング」において、日本は36位という低い順位にとどまっており、評価も下位の「C」ランク。将来への不安や物価高で生活設計に頭を抱える人が増えるなか、「老後の資金不足」というニュースを耳にするたび、モヤモヤした気持ちになるのも当然かもしれません。

 一方で、このランキングで世界1位となったオランダでは、老後の受給額が平均月額で約63万円相当に達し、3位のデンマークにいたっては月額86万円相当に達するケースもあるとされています。もちろん、こうした国々は現役時代の負担も重く、給与から高額な保険料が天引きされていますが、その分、働いている人の約9割が自動的に上乗せの年金に加入できる仕組みが整っています。

 こうしたヨーロッパの手厚い仕組みに対して、アジアの経済先進国として独自の防衛策を講じているのがシンガポールです。

 同国では、現役世代が年をとってから生活に困ることがないよう、国が主導してかなりユニークなシステムを作ってきました。その中心にあるのが、1955年にスタートして今もアップデートされ続けている「中央積立基金(CPF)」という制度です。働くすべての人を対象に、国が給料から強制的に天引きして貯蓄をさせるというもので、毎月の積み立ては医療や住宅、および将来の生活資金へと自動的に分類され、一人一人のライフステージを支える土台となっています。