■壊れないものは作っちゃダメ?
シャンデリアなんて家具も、そうですよね。あんな高価なものなのに、それこそ地震で落ちてきたら、ウン百万円がパーになる。でも、高いところからぶら下げたい。
弱いもの、壊れやすいものが美しい。これは、ずばり命にも言えます。命に限りがあるから美しい。永遠の命じゃ美しくない。それと同じで、壊れないものは美しくない。「大丈夫?」と思わず聞きたくなるようなものほど美しい。
そう考えると、俵万智さんの、この一首は実に味わい深いものに感じられてきます。
さて次の一首ですが、「壊れないもの」について歌った句には、こんな一首もあります。
「こわれないものは
つくっちゃいけないの。
こわれないものは
ほかをこわすの。」
(飯田有子)
これはうまいなぁ。たかだか31文字の短歌の世界ではありますが、地球単位での本質を見切る、素晴らしい一首だと思います。
そうなんですよね、世界にあるもの、世界にあっていいものは、すべて壊れていくものなんですよ。壊れていく生き物、壊れていく建物、壊れるということが地球にとっていかに重要か。
プラスチックに核廃棄物、壊れないものは地球環境にとって迷惑でしかない。つまり自然じゃないんですね。選者の穂村さんも感動しておられます。
この歌を初めて見た時、衝撃を受けた。自分が漠然と信じていた考えの逆だったからだ。モノでも思想でも、こわれるものよりも「こわれないもの」のほうがいいと思い込んでいた。(中略)「こわれないものはほかをこわす」なんて、考えもしなかった。何度も読み返しているうちに、この歌が地球よりも進化した星から来た生物のメッセージのように思えてきた(同)
壊れていく世界の中の壊れていく私たち。私もそうです。アナタもそうです。壊れものとしての人間なんですね。
「壊れないものは他を壊す」
だから人間には寿命という限りがある。いつかは死ぬということ、そのことを少しも怯えることはない。自分が壊れものである人間だということは、世界を壊さない条件なんです。それが自然の摂理なんですね。
永遠の命なんてものはけっしていいもんじゃない。限りある命だからこそ、大事にして生きる。
何より大事なことは“壊れものである自分”という存在を大切にして生きること。それが壊れものとして生きる、私たち人間にとって大切な掟なんですね。
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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。