■共感できないのについ見てしまうわけ
X上でも、《咲子と充に共感できる人は少ないはず。ただ、それでも連続ドラマとして2人の行く末が気になり、毎週観続けてしまう》《考察なんかしてんじゃないよ、と、「※これはただのヘンな人たち観察映像です」と、最近の考察ブームをぶっとばすかのような印象で痛快だった》などと、多くの声が寄せられた。
共感を徹底的に外していく作りは、見ていて清々しいほど。杉咲花(28)主演の『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)を連想している人がいたが、あちらも確かに共感を求めず、文菜(杉咲)と周辺の人物そのものを描くだけと、方向性は似ている。ありきたりなストーリーから常に外れていくので、考察することが意味をなさないのも同じだ。
ただ、『冬のさ~』は淡々と出来事を描いていったが、本作は興味を引く仕掛けがふんだんに盛り込まれていた。「咲子(蒼井)と充(松山)がどうなっていくのか」に、「本当に不倫だったのか」「咲子と樹生(中島)はくっつくのか」という下世話なネタを巧妙に絡ませ、見る人の関心を常に惹き続けていた。作家性の極めて高いドラマながら、商業作品としてうまく作られていたといえる。
共感を求めないカラーは、脚本を手掛ける生方美久氏の過去作『いちばんすきな花』(フジテレビ系)など、一連の作品でも貫かれていたが、本作はさらに洗練されている。内容的に取っつきにくい作品だが、巧みな設定と構成で、多くの視聴者を惹きつけることに成功し、視聴率や配信の数字を伸ばし続けたのだ。
次はついに最終回(第10話、9月11日放送)を迎える。蒼井が7日放送のラジオ番組『パンサー向井の#ふらっと』(TBSラジオ)にゲスト出演した際、《演じてて楽しかったシーンは「今週放送の10話、松山さんとの演技》と語っていたが、どんな絡みが見られるだろうか。ラストもまた、共感できないオチになりそうで楽しみだ。
(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。