■トライ&エラーを重ねることも必要

 最近では客側が「この時間に電話をかけてください」と人間のスタッフを指定できる“コールバック予約”システムを導入する企業も増えている。いずれにせよ、なんとか慢性的な人手不足の危機をしのごうとしているのがコールセンターの実情なのだろう。

「現段階ではAIの機能と性能は過渡期。ご存じのように、AIというのは使われないと頭が良くならない。そういう意味では、積極的に活用してトライ&エラーを重ねることも必要だし、日進月歩で性能も上がりつつあります」

 生産現場や物流倉庫などと違い、そもそも人間相手に言葉を扱うコールセンターは、ロボット化が極めて難しい領域とされてきた。オペレーターに求められる臨機応変な話術をAIが身につけるのは至難の業だ。

「同じ質問でも、相手によって取るべき対応が違ったりしますからね。たとえば高齢者の方に“USBの口に挿してください”と言っても、USBが何か分からないことがある。そういう場合、人間のオペレーターなら“ホウキみたいなマークの差し込み口はありませんか?”とか聞けるじゃないですか。このように相手に合わせて表現を切り替えながら解決していくようなアプローチが従来の自動対応はできなかったんです」

 問題が少しでも複雑になると、途端に回答精度が低くなるという不満も続出している。たとえば「営業時間は?」「パスワード変更方法は?」なら想定問答集通りに対応できるものの、「解約したいと考えているのだけど、今月分は払います。ただ、来月分は請求されたくない。そして端末の分割払いだけは続けたいのですが、どうすれば?」といった長文になると、もうお手上げだ。

 とはいえ、AIの進化を呑気に待っているわけにもいかない。コールセンターに連絡するのは緊急時か、ピンチのときが多いが、どうすればいいのか?

「もうすでに電話をかける人は減りつつあります。AIを使い慣れた消費者は、企業のサイトを調べる代わりにChaptGPTなどの生成AIに聞くようになっていますから。コールセンターへの電話自体、今後は確実に減少していくでしょう。少しずつ、つながりやすくなる可能性が高いはず」

 早い話が、現段階ではググるかチャッピーに聞くのが早くてストレスがないというわけだ。

「ただし、生成AIはときに嘘をつくので、情報の出所を見極めるリテラシーは絶対に必要です」

 最後に矢島氏はAI応答コールセンターでイライラを溜めないためのコツを次のように締めくくる。

「宅急便の再配達時間指定など単純な手続きは、電話のAI応答オペレーターでも問題ないというか、むしろ解決は早いはず。でも、それ以外は電話にこだわりすぎないほうがいい。“クレジットカードを紛失した”など、本当の緊急時は電話もつながりやすく設定されています。緊急度や重要度がそこまで高くないなら、チャット、LINE、問い合わせフォームなど、他の手段を使ったほうが最終的にはスムーズです」

 AI応答オペレーターの進化を待つより先に、消費者側が“電話以外の解決法”に慣れる必要がありそうだ。

矢島竜児(やじま・りゅうじ)
広告代理店、食品業界紙・誌の記者、コピーライターを経て、『月刊コールセンタージャパン』の編集記者、前編集長。2026年からはオンラインメディア『コールセンタージャパン・ドットコム』『CSMEDIA』のプロデューサーに。関連セミナーやイベント企画・プロデュース、コールセンターやカスタマーサービスに関する講師、アドバイザーなどにも対応している。コールセンター評論家としてTV出演もあり。2025年度の経産省「GENIAC-PRIZE」審査員(カスタマーサポート部門)。