■後悔は「本気で向き合った証し」
照英 価値観や感性がぶつかり合うといっても、それは“子育て”という部分で同じ方向を向いているからなんですよね。その“子育て”という共通の目的がなくなった時、つまり子育てを卒業した時、こういう「相互補完型」の夫婦はどうなっていくんでしょう? なんだか、子育てが終わってしまうのが不安だから、“子離れ”が難しいと感じる部分もあるんです。理想の子離れって、どういうものなんでしょうか?
杉山 何が理想かというのはケースバイケースな部分がありますね。子どもの性格にもよりますから。ただ共通して言えるのは、子どもがある程度成長して、一人で社会と向き合っていけるようになったら、親にできることは相談役ぐらいという感じかなと思うんです。
照英 でも我が家の場合、幸か不幸か、都内に住んでいるので独り暮らしをする必要もなくて、長男も実家から大学に通っているんですよね。そうすると、子どものほうもなかなか“親離れ”ができないのかなと心配になってしまうんです。物理的に距離が近いと、ついつい親も口を出したくなってしまって。子どもたちに伝えるべきことは伝えたい。やるべきことはやりたいっていう。
杉山 子どもは子どもで成長しているわけですし、自分のコミュニティも持っているものです。だから、相談役って、必ずしも親だけじゃないかもしれません。なので、子どもが助けを求めたらできるかぎりのことはするにしても、まずは相談役の一人ぐらいの関わり方がいいのかなと思います。
照英 先生も、そんな子離れを実践されているんですか?
杉山 そうですね。完璧にできているわけでは決してないとは思うのですが……。それでもやっぱり子どもにとって、一番のカウンセラーでありたいといつも思っていますね。私も親になるとついつい言いたくなっちゃうんですけど、ここから先は自分の経験を自分の中で整理していく。それを手伝うのが親なのかなぁと思っていますね。
照英 そうですねぇ。
杉山 あと、それ以上に大事なのは、やはり子どもにとって親はロールモデルですから、親自身が人生を楽しんでいる姿を見せること。その姿を見て、同じく大人になった子どもたちが「自分の人生を楽しめるものなんだ」って思えるんです。
照英 本書にも書いたように、確かにまだこれからやりたいこともたくさんありますからね。でも、親自身が人生を楽しんでいる姿といわれると、ちょっと自信がないですね。先ほどもお話ししたように、良くない姿もたくさん見せてきているし、夫婦喧嘩もたくさんしてきましたから。子育ての面で後悔していることも山ほどあります し……。
杉山 でも後悔は誰にでもありますし、それに後悔って「本気で向き合った証し」でもあるんですよね。
照英 本気で向き合った証し……最高の言葉ですね!
杉山 本当にそう思います。子育てに正解はないという話が出ましたけど、それって逆に言えば不正解もない、つまりはたくさん正解があるってことなんですよね。少なくとも、この子が生まれてきて良かったと思える感情があるなら、それは間違いなく正解だと思うんです。だから、その子が育ったら、その先の正解は子ども自身が見つけていくものです。そう思うことができれば、自然と子離れもできるのではないでしょうか。
照英 自分がこうと思って、もしくは妻がこうと思ってしてきた子育てですが、それに対して子どもたちはどう思ってきたのかって、なかなか聞けないものじゃないですか、本音の部分って。だから、「ちゃんと言葉のキャッチボールができていたのかな?」とか、「キャッチボールのつもりがどこかで“壁当て”になっていて、実はただの自己満足だったのかな?」とか不安に思うことは多々あったんです。でも、こうやって「本気で向き合った証し」と言ってもらえると、本当に救われます。
杉山 そうですね。子育てで後悔がゼロという人はいませんから。こう思えることが救いになると思うんです。
照英 そうですね。いや~、なんだか人間ってすごいなぁって感じました。本当に子育てって難しい。難しいけど、本当に楽しい! 改めてそう思うことができました。どうもありがとうございました。
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「後悔は本気で向き合った証し」「子育てに不正解はない」──この二つの言葉だけでも、今日の育児に疲れた親の心をほぐしてくれる力がある。
照英の等身大の葛藤と、心理学者の温かな視点が交差する本書は、子育て中の全員に読んでほしい一冊だ。
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【前編】では、国民的ドラマ『水戸黄門』(TBS系)のレギュラーを降板した胸の内と、子育ての不安や苦悩について、心理学者・杉山崇氏と照英が語り合う。《【前編】はこちらから》
照英(しょうえい)
俳優・タレント。1974年生まれ、埼玉県出身。元陸上競技・やり投の選手で、1996年の全日本学生選手権とひろしま国体のやり投で準優勝の経歴を持つ。自己ベストは73m90。大学卒業後、恵まれた体躯を生かし、モデルとして活動。1997年に単身渡米するなどの経験を活かし、数々のコレクションに出演を果たす。1998年、スーパー戦隊シリーズ『星獣戦隊ギンガマン』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。2002年から約5年間、『水戸黄門』(TBS系)に風の鬼若役で出演。その後は俳優・タレント活動だけでなく、司会・デザイナーなど活動の場を広げる。私生活では2005年に結婚。2007年に第1子(長男)、2010年に第2子(長女)、2016年に第3子(次女)が誕生。3児の父としての経験を幅広く伝える活動も行っている。
杉山 崇(すぎやま・たかし)
心理学者。臨床心理士。神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授。就職支援部部長。日本心理療法統合学会理事。子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。心理学と脳科学を融合した次世代型の心理療法を目指す。2児の子育て中。主な著書に『読むだけで人づきあいが上手くなる。』(サンマーク出版)、『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(永岡書店)、『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)、『精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」』(双葉社)など。
著者は陸上競技・やり投げの選手という元アスリートでタレントの照英。俳優として第一線で活躍していた著者は2007年に突然、国民的人気の時代劇シリーズ『水戸黄門』のレギュラーを降板。その理由は「子育てをしたいから」だった。子どもが苦手だったという著者が、なぜ、どのようにして子育てにハマったのか――その理由と、育児経験を経てたどり着いた「父親としての在り方」と、子どもだけでなく夫婦関係や動物との触れ合いで築いた「家族のかたち」について余すところなく語り尽くした渾身の書きおろしエッセイ。
