■色っぽい短歌を読み解く

 さあ、ここからは最終回にふさわしく、大人らしい色っぽい短歌を紹介しましょう。

 この歌の作者は、人間を2通りに見立てております。実に面白い見方ですが、人間は、この2通りのどちらかです。

 

あなたたちこんなところで
なにをしてゐるのつて
いふはうの人間
(本多真弓)

 

 この一首は何が言いたいのか。

 一方は「“こんなところで何をしているの!”と驚き、怒り、叱る人」。もう一方は「こんなところで何かする人」。その2通りに分けられるというんですね。そして、この作者は“言われるほう”ではなく“言うほう”の側の人間だと、自分のことを正直に告白しておられる。

 

  例えば、体育倉庫で誰かと誰かがキス、みたいなシーンを思い浮かべた。その時、突然、扉が開かれて明るい光が差し込んでくる。眩しそうな二人に向かって、「あなたたちこんなところでなにをしてゐるの」という驚きの声がかけられる。(中略)キスの当事者はどんな時も常に当事者、彼らは人生という舞台の主役。でも、〈私〉は決してそちら側の「人間」になれない。客席からただ見ているだけの観客だ(同)

 

 穂村さんは具体的な情景まで持ち出して解説しておられますが、人間は2通りしかいないという作者の見立てに、私、武田は感動しました。

 襖がある。アナタが、その襖を開けた。襖の向こう側に男女2人が、あられもない姿で驚いたようにアナタを見ている。そんなシーンを想像してみてください。

 そうなんです、皆さん。男女というのはときとして、とんでもないところで、とんでもないことをシたがるんですね。内容はあまり詳しくは話せませんけども……。

 襖の向こう側で、とんでもないことをしたがる人と、とんでもない2人を目撃して、「何してるの」と聞いてしまう人。世間は、この2つに分けられる。

 昔、五月みどりさんから色っぽい話を聞きました。あれは五月みどりさんがお色気満載だった頃。あの方が私と一緒に出演したラジオ番組で、ぽつりぽつりと夜行列車の旅の話をしてくださった。バンドメンバーと総勢20名ぐらいで、夜行列車に乗って地方公演に出かけたときの話。