最近、自動販売機で飲み物を買った覚えがない。そんな人も、少なくないのではないか。

「今年3月、自販機事業を主力とするダイドーグループホールディングスが2026年1月期連結決算を発表。303億円という過去最大の最終赤字となりました。同社は、2024年度に約27万台あった自販機を、2026年度までに2万台削減する方針も打ち出しています」(全国紙経済部記者)

 自動販売機を減らしているのは、ダイドーだけではない。

「コカ・コーラは2022年、全国に約88万台の自販機を設置していました。それが今年7月には、約75万台まで減少。伊藤園も2015年に約16万5000台ありましたが、2025年末には約7万5000台と、半分以下になっています」(同)

 24時間、いつでも飲み物を買える。そんな当たり前の光景が、徐々に失われつつあるのだ。

 なぜ今、自動販売機は姿を消しているのか。会社員として働く傍ら、自動販売機の写真を1万枚以上撮り続け、『マツコの知らない世界』『ラヴィット!』(ともにTBS系)などへも出演した自動販売機マニアの石田健三郎氏が解説する。

「自販機は、いつでも、どこでも、便利に商品が買えるというのが最大のメリットでした。そのため、基本的に値下げがない定価販売であっても需要は極めて高かった。しかし、2010年代から相次いだ消費税の増税によって、その状況が一変します。1円単位で価格を調整できるスーパーやコンビニと違い、自販機は10円単位で値上げせざるを得ない。“割高感”が生じ、スーパーやドラッグストア、コンビニに顧客が流れていってしまったんです」

 物価高で節約志向が強まる現在、その傾向はなおさらだ。

 少々割高でも、自販機なら並ばず、誰とも話さずとも買えたが、「セルフレジの普及によってその優位性も薄れた」と石田氏は指摘する。

 また、自販機の主力商品である「缶コーヒー」の需要低下も大きい。

「リモートワークの普及によって、休憩時間にオフィスで缶コーヒーを飲む習慣が減りました。さらに喫煙率の低下や、コンビニで本格的なコーヒーを手軽に買えるようになったことも重なり、自販機の売り上げにも響いたと考えられます」(前同)

 では実際、自動販売機1台当たりでは、どれほどの利益が出ているのか。飲料業界関係者が話す。

「立地によりますが、一般的に飲料自販機1台当たりの売り上げは月3万~10万円程度です。仮に、月5万円の売り上げだったとしましょう。商品原価は売価の2~3割程度。設置場所への販売手数料も2割前後はかかります。ここから、商品を補充するスタッフの人件費、トラックの配送費、自販機本体のメンテナンス費などが差し引かれる。最終的にメーカー側に残る利益は、売り上げの1~2割程度。月商5万円なら5000~1万円ほどです」

 月4万円前後しか売れない自動販売機となると、採算を取るのは難しくなるという。それでも、補充やメンテナンスのためには、人とトラックを動かさなければならない。維持するほど採算は悪化し、各社は、不採算の自動販売機から撤去を進めているのだ。