武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。
年を重ねてまいりますと、身体から消えていくものに、ありありと気づくことがあります。
まず若さがなくなります。その次に視力がなくなります。歯もなくなります。そして元気もなくなります。なくしてから初めて「あったんだ」と実感するので若いときには気づきません。
人はそれに気づくために年をとる。そこに“老人になる”という意味があるような気がします。
桜美林大学教授で身体心理学者である山口創先生がお書きになった『からだの無意識の治癒力~身体は不調を治す力を知っている~』(さくら舎)。この本を題材として、今回は「老人保健体育」というテーマで“人間の心と身体”について、武田流解釈を存分に交えて語っていきたいと思います。
本書の冒頭で山口先生はこう述べておられます。
誰でも心を持っていることに疑いはないでしょう。でも、自分の心をきちんと理解して生活している人って、ほとんどいないのではないでしょうか? 心は自分自身でもよくわからないものです(山口創. 『からだの無意識の治癒力~身体は不調を治す力を知っている~』. さくら舎, 2019=以下同)
言われてみれば確かに、自分の心を理解して生活しているかといえば、自信をもって「はい」とは言えませんよね。自分でも「なんであのとき、あんな風に思ったんだろう?」と疑問に感じることがあるんじゃないでしょうか。
そして、心は身体を通して表現されるものでもあります。無意識に行動してから、あとからそれに気づいて自分の心を知るということもあります。ですから、自分の身体、自分がしている行動に意識を向けることは、自分の心を理解することにつながるでしょう(同)
心と身体はリンクしている。だから行動に意識を向けると心を理解することにつながる。ところが私たちは自分の意思とは無関係に無意識に行動していることがある。
「人は自分の心のことも、身体のことも分かっていない」
私はこの山口先生の視点が面白いなと思いました。そういう視点に立ってみますと「ああ、なるほど」となったことがあります。