■優勝賞金100万ドルの大会も

 一方、頂点にはデカい夢が待つ。

「2026年シーズンの『ストリートファイター6』公式世界大会『CAPCOM CUP 13』では、優勝賞金100万ドルが設定されています。さらにトップ選手は、チームとの契約やスポンサー、配信なども収入源にしていて、世界には数億円規模を稼ぐスターもいます」(前出のゲーム雑誌ライター)

 では、プロになれなかった若者たちの時間はムダになるのか。

 昔から就活の“強み”とされてきた体育会系だが、eスポーツも負けてはいない。

「eスポーツでは、試合全体を俯瞰して見る力や、なぜ勝ったのか、なぜ負けたのかを分析する力が求められます。チーム競技なら仲間と意思疎通するコミュニケーション能力も必要です。こうした力は、将来の進学や就職でも評価されるようになっていくと思います」(前出の筧氏)

 そして、その競技経験を積む場所も一気に増えている。

「高校で部活動や同好会としてeスポーツに取り組んでいる学校は、2020年には28校だったんですが、2025年には700校ぐらいまで増えています。だいたいハンドボール部と同じぐらいの規模ですから、高校でeスポーツ部を作ること自体が、もう普通になりつつあります」(前同)

 さらに筧氏は、こんな変化も指摘する。

「学校生活になじめなかった子でも“eスポーツをやりたい”という理由で学校に通い始めるケースがあります。以前なら『ゲームばかりしている』とマイナスに見られていた経験が、競技として評価されることで、その子の強みに変わるんです」(同)

 企業側の視線も確実に変わり始めている。

 2020年に始まった社会人eスポーツリーグ『AFTER 6 LEAGUE』には、6年間で延べ637社・団体、約4200人が出場。参加企業の85%が「社内コミュニケーションが増えた」、58%が「他社との交流機会が増えた」と答え、商談や採用活動に役立ったとの声も出ている。

「このままいけば2030年頃には、“eスポーツを本気でやってきた”という経験が、分析力やコミュニケーション能力の証明として、企業から自然に評価される時代になるのではないでしょうか」(筧氏)

 ゲームに打ち込んだ青春を、胸を張って履歴書の強みに書く。それが当たり前になる日は、そう遠くないのかもしれない。

筧誠一郎(かけい・せいいちろう)
成城大学法学部卒業。eスポーツコミュニケーションズ代表、東京都eスポーツ連合会長、日本eスポーツリーグ代表。尚美大学スポーツマネージメント学科講師、中央大学国際情報学部講師。1983年電通に入社し、主に音楽・ゲームを中心としたエンタテインメント事業に従事。2010年に電通を退社し、様々なeスポーツイベントやeスポーツ施設、eスポーツテレビ番組のプロデュースを行う。2016年、eスポーツコミュニケーションズ合同会社を設立。全国フランチャイズチーム総当たりによる「日本eスポーツリーグ」を主催。著書に『eスポーツ論』(ゴマブックス)、『続・eスポーツ地方創生』(白夜書房)など多数。