武田鉄矢が、心を動かされた一冊を取り上げ、“武田流解釈”をふんだんに交えながら書籍から得た知見や感動を語り下ろす。まるで魚を三枚におろすように、本質を丁寧にさばいていく。
『からだの無意識の治癒力~身体は不調を治す力を知っている~』(さくら舎・山口創著)という、ふだん私たちが気づかない“心と身体のつながり”について書かれた本を題材に、「老人保健体育」というテーマで語っております。今回は日常で体験する“勘や直感”が心や身体と、どのように関係しているのかについて。
アメリカのタルサ大学のパーベル・レビスキー氏らが行った興味深い実験があります。
パソコンの画面のどこかに十字のマークがパッと表示されて、すぐ消える。出ては消えての繰り返し。ランダムに表示される場所を、被験者に予測してもらう実験です。
実はこれ、ランダムに表示されているように見えて複雑な規則性があるんですが、何十回も繰り返すうちに、被験者はマークが出る場所を予測できるようになるんだそうです。
ところが、本人は、その規則性にまったく気づいていない。身体が無意識のうちに勘や直感として「次はここ」と予測できるようになる。つまり、身体が先に覚えるんですね。
本書は、次のような説があることも紹介しています。
人が何か体験をしたとき、身体の感覚に「しおり」を挟んで、その動き(体験)を記憶するそうです。そして似たような状況になったときに、「しおり」を頼りに素早く判断できるようになるといいます。
これは一種のフィードバックシステムで、例えばクマを見た場合、脳が「見た」と意識できるのは、実際に目撃してから10ミリ秒たってからだそうです。ところが、この10ミリ秒の遅れが命取りになる可能性があるそうです。
この時間差は、食うか食われるかという危機的な状況では決定的な差になります。そこで、「見た」と判断する以前に、脳は無意識の領域から身体にそれに備える命令を発して、いわば「自動的に」相手の攻撃をかわしたりしているのではないでしょうか(山口創. 『からだの無意識の治癒力~身体は不調を治す力を知っている~』. さくら舎, 2019=以下同)
クマと遭遇した際には、脳が無意識の領域の「しおり」に挟んである“生命の危機を感じたら、こう動く”という記憶を筋肉、内臓、ホルモンを一瞬のうちに身体に流して退避行動が取れる。つまり「見た」と認識するより先に身体が動いて逃げるというわけですね。
この説を聞いて思ったけど、やっぱり訓練って大事なんですね。避難訓練とかバカにしないで、やっとかないとダメなんだなぁ。実際に身体を動かして「しおり」を挟んでおかないと、いざというとき、とっさに身体が動いてくれないんですね。