■盗んで食べたトマトの味が今も忘れられない
オレ、まだ忘れないけど、子供だったとき、悪ガキ3人でトマト畑のあぜ道を匍匐前進、手を伸ばして盗んだトマトのうまさ忘れないもん。
トマトを食べるたびによみがえるんです。あぜ道で匍匐前進するから泥だらけになって、手にアリが寄ってきて噛まれた。けど、「痛い!」を我慢して、口の周りをトマトでベチャベチャにして、ひたすら食ったもんなぁ。うまかった……!
農家さん、ごめんなさい。その節は、ご迷惑おかけしました。
初めてバター塗ったパンを食べたときも忘れられない。西洋人は大きくなるはずだと思ったねぇ。
こうした記憶が色鮮やかによみがえるのは空腹ゆえのこと。原画の色が濃いんですよ。こうやって考えますと、記憶というのは内臓とつながっていると思いませんか。
ところが、現代社会では「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれる状態が注目されているそうです。自分が今、何を感じているのか、それをうまく捉えたり、言葉にしたりするのが難しい。しかも本人にとっては、それが、ふだんの自分ですから、なかなか気づきにくいこともあるそうです。
これはまさに、「お腹がすいた」とか「疲れてきた」といった身体からの信号をうまく読み取れなくなっていることを意味しています(同)
人間の感覚というのは不思議なもので、ある感覚には敏感なのに、別の感覚には鈍かったりすることもあるそうです。
ここで、ふと頭をよぎったのは、テレビに出てくるフードファイターと呼ばれる人たち。
私もテレビ番組で、目の前で大食いの方々がフードファイトしているところを見たことがありますが、ものすごかったもの。
寿司を100個食べ続けるところを見せてくれましたが、おなかがパンパンに膨れて、今にもはち切れそうになってた。
あれだけ同じものを食べ続けられるというのは、私たちがふだん感じている「もう、おなかいっぱい」とか「そろそろ違う味が欲しい」という感覚とは、どこか違うんでしょうね。
もちろん本人たちはおいしく食べているんでしょうけど、見ているこっちには想像がつかない。1個目と100個目は同じように「おいしい」と感じているんだろうか……! 驚くばかりでした。
一方、私はというと、年を取ると味に敏感といいますか、うまいものを味わって食べるようになりますよね。最近、海援隊のメンバーを含むじじい10人ぐらい引き連れて、ツアーで日本中の田舎町を旅してますが、打ち上げでスタッフと一杯やると、ビールで乾杯した後に、じじいたちみんな、一斉に動かなくなるんだよね。「クワ~」って言いながらさ(笑)。うまい日本酒飲めば「カ~」って言いながら動かなくなる。
あの「クワ~」や「カ~」は、色濃く記憶に残っていくんじゃないかなぁ。
心身の不調を抱える人が増えるなか、身体心理学(健康心理学)の分野に注目が集まっている。本書は腸・皮膚・筋肉に特化して、身体が持つ無意識のうちに働く治癒力を科学的知見から明らかにする。著・山口創、さくら舎

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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。