■「今の若者はどう考えても失敗できない」

 失敗をしないと文化は育たないし、失敗をしないと人は幸せになれないけど、今の若者はどう考えても失敗できない。

 上の世代ができることって、自分の失敗を見せることやお金を渡して“これで失敗してこい”って言うことしかない。だから私はこの話のハッピーエンドは、一か八かでどうなるか分からないけど、“真央ちゃんが失敗しようとすること”だなと思って。

 だから宝石商のTさんから学んだ“失敗が文化的なものを養う”というのは、本当にそうだと思いました。

柚木麻子/撮影・ピンズバNEWS編集部

ーー先ほど「失敗が文化的なものを養う」というお話があったかと思いますが、柚木さん自身も失敗した経験はありますか?

 どの本に関しても失敗はあります。例えば、前作の『らんたん』。

 私としてはすごく頑張って書いて、面白かったと思った。と同時に、いわゆる“エリート”と言われる女性同士が手を取り合って頑張ってきたことを好意的に描きすぎたために、“社会が変わらなくても、当事者が手弁当で頑張ればいいよ”と思われることが増えた。

 ですが、失敗作だとは思いません。毎回色々と“もっとこういう風に出来なかったかな?”ってことがあります。ある意味、小説家って自分が好きに書いたものを世の中に出せる仕事なので、失敗がギリギリ許されるなと。毎回何かしら反省があって、それを次回作で回収するみたいなことをずっとやっているような気がします。

■柚木麻子(ゆずき・あさこ)
 1981年8月、東京都世田谷区生。2008年、『フォーゲットミー、ノットブルー』で第88回オール読物新人賞受賞。代表作に『ランチのアッコちゃん』シリーズ(双葉社)、『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋)、『らんたん』(小学館)などがある。最新作『オール・ノット』(講談社)が4月19日より発売中。