■海外での手術で失敗、帰国後泣きつくケースが多発

 安く済むとあれば、海外での手術が魅力的に映るわけだが――。

「正直、私も、トルコで安くできるならもういいかなと思って、一度は美容的骨延長手術を引退したんです。整形外科医として、美容的骨延長による将来的な心配――関節の変形が早くなるなどといった可能性がゼロとは言い切れない葛藤もありました。

 でもその直後、トルコで大地震が起こりました。建築基準問題によりビルが多数崩壊し、多くの命が奪われるさまに、やはり、日本の建物の安全性や病院の頑丈さは素晴らしいと感じたのです」

 日本人が安心して医療を受けられるのはやはり日本なのでは、と自らの使命を痛感した吉野医師は、現場復帰したという。背景には「海外での手術が失敗し、苦しむ声を聞いた」事情もあったという。

 吉野医師が、海外手術でのリスクを指摘する。

「海外の外国人相手の美容的骨延長は、結局、カネ儲けです。海外ではベッドの回転数を上げるため、両足一度に手術することを推奨する。しかも術後の手当ても万全とは言い難い。身長が高くなっても、適切なリハビリを行なわないと歩き方に影響が出ます。感染症につながる衛生面も心配です。

 髄内釘が皮膚を突き破る、骨が変形しているなどといった海外での失敗例に対して私が再手術を行なうと、患者さんの怒りが私に向かうことも。言い方はよくありませんが、正直失敗した他人の尻を拭きたくはありません。ただ、そのままでは日本の医療がガラパゴス化してしまう。一防波堤としての気概です」