■「LEDウォール」も導入された
特撮作品はスケジュール調整が難しいこと、一般ドラマに比べるとフィクション色の強い場所で戦うこと、合成もあり、グリーンバックや、挑戦的な撮影を積極的に行なっている。昨年放送されていた『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』では“実写映像とCG映像をリアルタイムで合成する”という手法を確立し、1年間駆け抜けた。
さらに、東映は2022年10月に東京撮影所に「バーチャルプロダクション部」を設立。今年スタートした『王様戦隊キングオージャー』で、グリーンバック合成のさらに先を行く、CGを用いた背景で撮影が可能な「LEDウォール」という技術を本格的に導入することに成功したのだ。LEDウォールとは、平たく言えば超高性能の書き割りのような装置で、現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』にも導入されている。
7月28日公開の劇場映画『キングオージャー アドベンチャーへブン』にいたっては、“数分の孤児院のシーン以外、ほぼ9割がLEDウォールスタジオ撮影でロケなし”という成果も残しており、今後の特撮業界に大きな影響を与えるはずだ。
こうした、壮大な世界観を描くための創意工夫が、特撮の現場では日進月歩で行なわれている。それを下積み時代から現場で学べるうえ、同時並行でアクションも習得できるからこそ、特撮出身の俳優はファンタジーやSFを描く、漫画原作の実写映画との相性がバツグンなのだろう。
今後もますます進歩していくに違いない、特撮および映画業界全体の合成技術。この技術を学べる登竜門という意味でも、特撮俳優たちはこれからも重宝されていくはずだ――。