■フリーのディレクターの危険な労働環境

 それでも、民放のテレビ局員の労働環境は徐々に改善してきていると言われているが、フリーランスのディレクターはいまだに過酷な環境で仕事をせざるを得ないという。

 制作会社関係者はこう話す。

「いまテレビ界で“危ない”と言われているのが、フリーのディレクターなんです。まずそもそも、ディレクターは取材、撮影に加えてVTRの編集作業もありますからね。編集にとにかく時間がかかるんです。VTR1分作るのに1時間かかかるとも言われますからね。

 加えて、働き方改革で“若手を守る”という名目で、現場にADがいなかったり、先輩ディレクターよりも先にADを帰らせることも増えてきているんです」

 結果、これまでADがやっていた現場の雑用などもディレクターがやることも出てきているという。

「フリーランスの場合、会社に所属していないので、何時間でも働けるといえば働けますからね。それにフリーなので“稼ぎたい、稼いでおきたい”という思いも強い。仕事を断ったら次の依頼は来ないかもしれませんし、そういった不安から、来た仕事は断らないという人も少なくありません。

 そして、テレビ界の不況もあります。1本のギャラがどんどん下がっていて、これまで通りにやっていては食っていけない。だから、やる本数を増やすんです。また今は、テレビだけでなくYouTubeや配信メディアなどの仕事もある。仕事の数が増えているとも言えます。

 現在、そうやってディレクターをやっている人は若い頃から激務続きで、プライベートもないような生活を送ってきて独り身、という人も結構多い。今はコロナ禍で会議もZoomですし、編集作業なら1人、自宅でのテレワークでできてしまう。

 食生活も乱れがちで昼夜逆転生活……それで、心筋梗塞や脳梗塞で倒れたときに、周囲に誰もいないという状態なんです。結果、“〇〇さんと連絡が取れない”となって、2~3日後に発見されて亡くなっている――というケースがよくあるんですよね。

 今、フリーのディレクターで命の危険を感じながら仕事をしている人は多くいますよ……」(前同)

 命があっての仕事のはずなのだが――。