■乃木の妹説が浮上

 その説とは――。

「“柚木薫=乃木の妹説”です。この説が有力視されている理由の1つは、『VIVANT』には人間関係や場面転換の演出など、随所に福澤監督が好きな『スター・ウォーズ』のオマージュが垣間見えること。『スター・ウォーズ』も“敵の正体が主人公の父親で、実はヒロインも主人公の妹だった”という展開でした。

 そして、幼少期の乃木の回想シーンも、“薫=乃木の妹”説を後押ししています」

 第4話の乃木らしき赤ちゃんと両親(高梨と林遣都/32)が映るフラッシュバックシーンは、カメラアングルが下から見上げるような構図だったため、“実は幼少期の乃木の目線で、赤ちゃんは別の人物では?”といった考察が以前から行なわれていた。

 これまでは、この赤ちゃんは第1話のラストでベキ(役所)を「父さん」と呼んだノコル(二宮和也/40)ではないかという説もあったが、第5話でテントの構成員だったアリ(山中崇/45)が、組織の長であるベキを「我が父。偉大なる指導者」と表現したことで、“赤ちゃん=ノコル”説は薄れつつある。

「これまでの描写から、ジャミーンはテントと深いつながりがあり、かなり重要な人物であることが示唆されています。薫がもし乃木の妹だとすれば――彼女は父と母を探すためにバルカ共和国へ渡った。そして、父親が現在、テントのリーダーであることを知り、接点を作るべくジャミーンや、第1話の乃木を狙ったテント構成員の自爆に巻き添えで死亡したジャミーンの父・アディエルに接触していた、とも考えられます。

 前述の第4話の乃木のフラッシュバックシーン、母(高梨)が赤ちゃん抱いて笑顔になる場面も、フラッシュバックに至るきっかけは、ジャミーンが日本に着き、機内で薫が笑顔で彼女を抱きしめたことからだった。薫の笑顔で母の笑顔の記憶を呼び起こす乃木――そんな彼が薫に感じている愛情は、恋愛ではなく母の面影と家族愛なのかもしれませんね……」

 そんな柚木は、ジャミーンを看病する理由について「アディエルと婚約していたから」と警視庁公安部の野崎守(阿部寛/59)に説明していたが、アディエルの死を悲しむ素振りはなく、第3話にて、実は婚約の話は逃亡劇の際にジャミーンの看病を野崎に受け入れてもらうためのウソだった、とカミングアウトしていた。

「薫には、“乃木の妹説”の前に、序盤からずっと“テントのスパイ説”が指摘され続けています。アディエルの死をノコル(二宮)がベキ(役所)に報告した際の発言も、今にして思うと違った意味に聞こえてきますね」