■有村が演じる“絶対善”瀬名がぶっちぎりで不評

 本作について役者の演技や演出以上に厳しい声が出ているのが、古沢氏の脚本だという。

「言うまでもありませんが、古沢さんは実力も間違いないし、ヒットメーカーの旬な脚本家ではあります。

 しかし、3本も劇場版が製作されている『コンフィデンスマンJP』や、『半沢直樹』に並ぶ堺さんの代表作の1つドラマ『リーガルハイ』(フジテレビ系)が分かりやすいですが、古沢氏が得意とするのはぶっ飛んだ世界観やキャラクターをファンタジックに描きつつも、現代社会や一般論を風刺するエンタメ作品。歴史ファンがしっかり見たい大河に起用するには、作風があまりにもミスマッチだったのでは、と考えられます」(テレビ誌編集者)

 大河ドラマはあくまでも史実をもとにしたフィクションで、キャラ造形に大胆なアレンジを加えたり、歴史の要素を組み合わせて創作したオリジナルキャラクターが登場するのも珍しい話ではない。

「それこそ昨年放送の『鎌倉殿の13人』では“史実で非業の死を遂げた人物は全員同じ人物に始末された“という解釈から善児(梶原善/57)というキャラが生まれましたが、 視聴者からは“アサシン善児”の異名で人気を博していました。ただ、『鎌倉殿』を手掛けたのは歴史好きで大河ドラマ愛好家の三谷幸喜さんだったので、しっかりツボを押さえていた。

 一方で、『どうする家康』の場合はフィクションというのを差し引いても、歴史好きファンが呆れてしまう改変や演出が多く、そこが大きな反感を買っている印象を受けます」(前同)

 たとえば織田信長といえば火縄銃だが、第2話では“同じ火縄銃で間髪入れずに2発撃つ”という火縄銃の構造上ありえないシーンが描かれたこともあった。

 前出のテレビ誌編集者は続ける。

「特に劇中で死んだ後も歴史ファンの間で批判の声が絶えないのが、有村架純さん(30)が演じる家康の側室の“瀬名”こと築山殿ですね。

 彼女は定説やこれまでの大河ドラマでは“悪女”として描かれてきましたが、本作は逆に健気で可愛らしい才女になっている。あえて、“姑は悪女だ”と訴える信長宛の手紙を自身の息子である信康に嫁いできた信長の娘・五徳に書かせ、家康らを守るために泥をかぶり、その後、家康の助けを拒み自害――そんな流れで、史実の“悪女伝説”につなげました」

 しかし、瀬名を「ある種の絶対善」(7月3日付の『日刊スポーツ』にてチーフ演出・村橋直樹監督談)として描いた結果、あまりに史実を無視しすぎた無理のある展開が生まれてしまった。

『どうする家康』の瀬名は、隣国と奪い合う戦をするのではなく、それぞれが豊富に持っているものを与え合えば、戦は起きない、という発想から武田や北条と手を結び、互いに物資を融通する“慈愛の国”を計画しており、家康もそれに感化されていた、という設定だった。