■円熟味を増した俳優・堺雅人の「現在地」は――

 早稲田大学の学生劇団出身の堺は、吉田さん曰く「“光を浴びていない部分”で演技ができる俳優」。『VIVANT』でもそれが存分に活かされているという。

「その場の空気にそっと溶け込める。結局、俳優のすごさって、“ものがたりの中の日常”をどこまで演じられるかみたいな話なんですよね。たとえば『VIVANT』第7話の目玉焼きを焼くシーンでも、堺さんは“和”な家にすごく似合っていて、些末な動作で“貧しいわけではないけれど楚々としている“雰囲気を伝えてくる」(吉田さん)

 また、堺が大学の劇団にいた頃からその舞台に触れてきたという木俣さんは、その演技について「50代を前に、円熟味を増し、名人芸の域に到達している」と言う。

「昔から圧倒的に中心に立って輝く俳優で、演技も完成されていたと思うのですが、それがますます研ぎ澄まされてきた。コミカルもシリアスもいろんなことがやれて、なおかつこれほど年齢性別問わず、万人受けもする俳優さんはなかなかいません。

 仮に脚本や話の流れに“ん?”と疑問に感じる部分があったとしても、それを感じさせないのが堺さんのすごさですよね。ドラマの“密度”を上げます」(木俣さん)

 これからいよいよ終盤に向かうが、吉田さんは堺が演じる乃木に「ダメージを与えてほしい!」と“リクエスト”。「堺さんには、ダメージを与えてこそ輝くものがあるんです」と期待する。

 一方の木俣さんは「間違いなくもう1、2展開ひっくり返してくるでしょうから、その時にどういう顔を見せるかで、堺雅人の現在地が分かるのでは」と期待を込める。

 めちゃくちゃな展開も複雑な設定もすべて受け止め、共演者はもちろん視聴者も巻き込んでいくのが堺雅人という俳優。ドラマはさらなる怒涛の展開が予想されるが、堺がどこまで“裏切って”くれるのかを、視聴者はどこか期待している。