■「時給換算すると社員のほうが低い」切実な事情
なかなか居つかないアルバイト。それにより時給競争が起こっているという。
「目の前にある中華チェーン店が時給1600円で求人しているのを見たときは、気が遠くなりましたね。結局、人員確保のためには人件費を上げるしかないんですが、その分を潤沢に払えるほど売上があるかという話で、うちには絶対無理。1300円というのもやっと最近上げたぐらいですし……」(前出の渋谷区のカフェ店長)
では、どうやって店を回しているのか。
「隙間時間にお金を稼ぐバイト用マッチングサービスを利用して、アルバイトにはランチタイムで忙しい時間の洗い物だけなど、時間や業務を限定した作業的な仕事を集中的にお願いしています。正直、お店がヒマな時間に給料を払う余裕がない。ただしその分、社員の仕事は増えます。時給換算すると、もはや社員のほうが低いですよ」(前同)
席数制限についても「どこもやっているのでは」と言う。
「お店に入っていただいても長時間お待たせすることになると、クレームにつながりかねません。ですので、やよい軒のように最初から制限する、という方法はうちもとっています。テーブルに置いてある“予約席”という札がそれ。“空席なのに座らせてもらえない”という苦情を避けるためです」(同)
横浜市にある別のカフェ店長(40代男性)は、「飲食業界のなかでも、昼帯のチェーン店のアルバイトは特に厳しい」と語る。なぜなのか?
「かつて飲食店のアルバイトというのは、たとえば将来飲食業をやりたい夢があるとか、自分が好きなパンケーキ店で働きたかったとか、あるいはたとえ給料が安くても“学生のうちにさまざまなアルバイトを経験してみたい”とか、何かしらお金以外の魅力があったものです。
でも、今はやりたいことよりもお金という時代。それなのに売価が安く設定されているチェーン店では、アルバイトの時給を上げられるはずもない。働く方も安く使い捨てにされたくはない。結果、どんどん時給の高い夜職に流れます」(前同)