■専門家が指摘する「ビジネスモデルの崩壊」

 千葉商科大学准教授で働き方評論家の常見陽平氏は、「一部飲食店のビジネスモデルの崩壊」を指摘する。

「飲食業界がどこも人材不足というわけではなく、獲得合戦が起きているのが実態です。なかでもチェーン店が厳しいのは、非正規雇用の方に安く働いてもらうことで成り立っていたからなんですね。

 たとえば回転寿司チェーンの正社員率は約1割と言われるほど、チェーン店はどこも正社員が少なく、現場はアルバイト頼みだった。アルバイトが戦力化・基幹化していたわけです。アルバイトをしてくれる人材がいないとなると、経営が一気に危うくなります」(前同)

 業界内でも、アルバイトが働く環境の差が出てきているという。

「飲食業界のブラックな労働イメージから脱却すべく、むやみに働かせ過ぎない、アルバイトにもスキルアップさせるなど、労働環境を整える方向へシフトしている会社が出てきています。

 結局、アルバイトといえどトレーニングをさせないと、きちんとしたサービスは提供できない。それが顧客満足度につながるためです。そのことにようやく気づき、育成を重視するようになった会社はいいのですが、育成したくてもその体力がないところは疲弊していくというからくりです」(同)

 アルバイト頼みだった飲食業界。変革か崩壊か、今後、二極化が進みそうだ。

常見陽平
リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年より千葉商科大学国際教養学部専任講師。2020年より准教授。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。