■フワちゃんのデビュー戦を「タイトルマッチと遜色ない試合」と評した武藤敬司

 22年10月にスターダムのリングで行われたフワちゃんのデビュー戦。それを放送した『行列ができる法律相談所』(日本テレビ系)のスタジオゲストには武藤敬司がいた。そのあと堀江さんは武藤からフワちゃんデビュー試合の寸評を聞いたという。武藤曰く「あれ、女子プロのタイトルマッチと遜色ない試合やってるんだよ」。そのうえで「ということは、フワちゃんの努力や才能もあるけど、そういうことができるシステムができあがってるってことだ」と語ったという。

 武藤敬司が培ってきたプロレスラーの技量とは、世界中どこへ行っても誰とでも試合ができるというものだった。けれど「これからのプロレスはフワちゃんみたいに、その演目をいちばん綺麗にやる人がグッドワーカーって言われるような時代になるかもしれねぇな」というのだ。斎藤文彦さんはすかさず「武藤さんの分析が正しい」と述べた。この分析についての語り合いは面白かった。考える悦びをもらった。

 皆で語り合ううち、そういえばと私が思い出したのが「スターかくし芸」だった。日本のお正月の定番だったフジテレビの名物番組である。フワちゃんのプロレスはまさに「スターかくし芸」だったのではないか? そう思えてならなかったのである。フワちゃんのプロレスを「かくし芸」と言うと、ネガティブな評価だと思う方もいるかもしれないが逆だ。フワちゃんが素晴らしかったからである。

■フワちゃんはあの日「スターかくし芸大会」を見せてくれた

 あの頃、スターかくし芸は見せどころとして「過程」にも力を入れていた。いかに厳しい稽古をし、ストイックに臨んだかという稽古期間も視聴者に可視化していた。演目の専門家やプロがタレントにつきっきりで指導する日々。どう見ても過酷であった。

 迎えた本番ではスタジオもお茶の間も緊迫感がある中で、タレントは見事に成果を見せてくれた。「ああ、今年もマチャアキ(堺正章)はすごいな」とお茶の間が感服したのだ。紛れもない真剣勝負を見せていたのである。けっこうな長い間、日本はそうしてお正月を迎えていた。だからフワちゃんはあの日「スターかくし芸大会」を見せてくれたのだと、私には思えてきたのだ。

 マチャアキに演目のプロが指導したように、フワちゃんを支えた専門家はスターダムの選手であった。そしてスターダムのレスラーたちも、テレビのゴールデンタイムで自分達をプレゼンしたのだとも言える。チーム一丸となってプロレスを世の中に見せつけたのだ。