■SHEINの強みは「リアルタイムファッション」

 激安価格の秘訣はどちらも生産工場と直接取引していることだというが、前出のトレンドアナリスト・太田氏は、『SHEIN』の強みについて「とにかくトレンド」だという。

「『SHEIN』は独自のAIにより、現在進行系でネット上で人気のものや注目されているトレンド情報を解析し、商品を企画。それを提携工場でどんどん作るんですが、大量生産はせずあくまでも100や200といった少量ずつ、“今新しいもの”を素早く市場に出す。少量ロットで製造し、売れている商品のみを追加発注することで“売れ残り”のリスクもないわけです。

 注文して到着するまでの期間も1週間ほど。もうファストファッションならぬ、“リアルタイムファッション”。今トレンドのものを今だけ着たいというニーズを呼び起こし、購入側も1シーズンで処分する前提という感じですね」(前同)

 しかし、買ってはみたものの失敗することはないのだろうか? 『SHEIN』をよく利用するという20代の女子大学生は、「全然ありますよ」とあっけらかんと笑う。

「実物を見ていないので、サイズ感、素材感などといったレビューはめちゃくちゃ読みます。それでも思っていた着心地と違う……ということは発生する。でも、そもそも長く着たいものはSHEINで買わないし、安いから仕方ないかなという感じですね。元々の期待値が高くないというか、思っていたよりも良かったらラッキーぐらいの気持ちです」(前同)

 売れ筋ランキングは1時間ごとにリニューアルされるため、まさに「今売れているもの」が分かる仕組みで、「TikTokを見るのと同じ感覚」だという。

 太田氏は「『SHEIN』は、SNSに慣れた若者の行動をよく分かっているマーケティング」だと指摘する。

「『SHEIN』は公式インスタで“SHEINコーデ”をした人を募集・紹介するなど、SNSを上手に活用していますが、ユーザーも、インスタやTikTokで自分が可愛いと思う人のファッションを流し見するように、『SHEIN』をチェックする。もはや『SHEIN』は通販サイトというよりもSNSに近い使われ方で、それこそが『SHEIN』の狙っている戦略でしょう」(前同)

※画像は「JP.SHEIN.COM」公式インスタグラム『@shein_japan』より