■Temuが勢いを伸ばしている背景に「ゲーム性」

 では『Temu』の強みと、勢力を拡大している理由は何か。

「『SHEIN』はアパレル・美容系が充実しているので、圧倒的に女性ユーザーが多い。一方で『Temu』はちょっとした生活用品や雑貨、インテリア、家電のラインナップも豊富でホームセンター感があるため、もう少し幅広い層が利用している印象です。

 売れ行きの状況がリアルタイムでわかるようになっているのも特徴ですね。“まもなく売り切れ”とか、“残り○点”、またどのぐらい売れたかという目安の数字も“2K+販売”(=2000個以上売れた)といった表記がある。

 たとえば、めちゃくちゃ売れている800円のミキサーが目に入ってくると、“なんだろう?”と気になってしまうもの。またシンプルなものはもちろん“Kawaii”商品も多く、見ているだけでワクワク感があって楽しいんです」(前出のトレンドアナリスト・太田氏)

※画像は「Temu」公式インスタグラム『@temu』より

「Team Up,Price Down」が社名の由来だという『Temu』。みんなで一緒に低価格を目指そうという考えのもと、友達紹介をすると無料ギフトやクーポンなどが手に入る特典も用意されている。

「こんなに安いの!? とついつい誰かに話したくなるし、それで一緒に買うとお得になる。『Temu』は、たとえば、残り点数の表示による“煽り”で生まれる競争意識や、友達紹介を達成した後の報酬、何か掘り出し物はないかと探したくなる好奇心など、ショッピングにゲーム要素を取り入れた“ゲーミフィケーション”が上手で、それこそが人気に火がついた秘訣だと思います」(前同)

 実際、米グローバル・ワイヤレス・ソリューションズ(GWS)が今年年7月に発表した消費者パネル調査によれば、ユーザー1人あたりが小売アプリに費やす時間として、『Amazon』が1日平均12分、『SHEIN』が平均14分だったのに対し、『Temu』は平均20分。アプリのなかでユーザーが回遊し、滞在時間が長くなっていることがうかがえるが、それはまさにゲーム性がある故だろう。

 一方で、ユーザーからは懸念の声も上がっている。

「フランスや韓国でトコジラミが流行していることから、越境ECサイトの安全性を危惧する意見もあります。越境ECサイトで購入した商品の段ボールや衣服に”トコジラミが付いていた”との投稿もSNS上にあることから、ネット上では心配する声も絶えませんね……」(前出のトレンドライター)

 問題点、懸念点も指摘されているが、とにかく早くトレンド情報をキャッチでき、SNS要素やゲーム要素もある通販アプリ。物価高の日本においては、ますますその存在感を強めていきそうだ。

太田まき子
新潟県出身。大学卒業後、広告会社及びマーケティング会社にて女性向け商材のプロモーション、ファッションカルチャーイベントの企画運営、エンタメ系の広報PRなどを担当。現在はフリーランスのPRとして、トレンドのマーケティングやリサーチを行う。