12月7日、北海道・函館市の海岸に大量のイワシやサバが流れ着いたことが大きく報じられた。海岸1~1.5キロほどにも及ぶという死んだ魚の量は1000トンを超え、12日からは重機による回収が始まっている。しかし、その作業に着手するまでには5日もの時間を要した。
さらに13日には函館市の隣町である江差町でも海岸に1トンほどのイワシが打ち上げられている。道南の港町で今、何が起きているのか――。
渡島総合振興局が、地元の漁協組合から「無数の魚が海外に打ち上げられている」と連絡を受け取ったのは、7日の午前中。すぐに函館市と連携し処理方法を話し合った。しかし、あまりに数が多すぎたことで議論は難航。その日は何も動けないまま8日になったという。北海道渡島総合振興局水産課の漁政係長・榊原滋さんが、慌ただしい現場の様子を語る。
「漁業のエサ用にと、打ち上げられたイワシを少し確保した漁師さんもいたようです。近くの港の中で死んでいるイワシについては、漁師さんたちが網ですくったりして計20トンぐらい回収しました。この時点ではミール(肥料)工場で処理し、再利用するという話でした」
厄介だったのは、砂浜に打ち上がったイワシだ。肥料工場からは砂まみれの魚は処理できない、と告げられてしまっていた。
「埋めるという話も出ましたが、イワシはあぶらが結構出る。それが土壌に染みたりしたら環境面に悪影響が懸念されるということで、9日になり、最終的にはゴミ処理場で燃やすしかないという結論になりました」(前同)
そこで函館市や渡島総合振興局の職員、漁業関係者100人ほどが総出で、9日は30トン、10日は40トンを回収。ここまですべて人力だ。榊原さんが続ける。
「人の手でできることには限界があります。そこで、やっと12日以降はショベルカーのような重機を使って、市のほうで一気に片付ける方針が決まりました。ただし燃やすにしても、やはり砂がかんでしまうのは問題になる。砂により、処理場の機械が壊れてしまう恐れがあるためです。もちろん、砂が極力入らないように注意して作業はしていると思いますが……」
11日の時点で、打ち上げられていたイワシは約600トン、海中に約500トン。回収作業はなんとか年内に完了させる見込みだという。